あすけん運営が導入した「バイブコーディング」で開発期間が3倍に|AI開発の意外な現実
@aifriends

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「バイブコーディング」という新しい開発手法が、日本企業に急速に広がっています。人気の栄養管理アプリ「あすけん」の運営会社も導入し、予想外の変化が起きました。
「バイブコーディング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは2025年2月に、OpenAI(ChatGPTを作った会社)の共同創設者であるAndrej Karpathy氏が提唱した新しい開発手法です。
従来のプログラミングは、エンジニアがコードを1行ずつ書いていました。しかしバイブコーディングでは、人間が「こんなアプリを作りたい」と自然な言葉で伝えるだけで、AIが自動的にコードを生成します。
Karpathy氏は「雰囲気(vibe)に身を委ね、コードの存在すら忘れる」と表現しました。つまり、プログラミングの細かい知識がなくても、やりたいことを伝えればAIが実現してくれる時代が来たのです。
この言葉は大きな話題を呼び、2025年のCollins英語辞典で「年間単語」に選ばれるほど普及しました。
国内でも、有名企業がバイブコーディングを取り入れ始めています。
その代表例が、人気の栄養管理アプリ「あすけんの女」を運営する株式会社あすけんです。
あすけんは、食事を記録するとAIが栄養士のようにアドバイスしてくれるアプリで、ダイエットや健康管理に使っている人も多いでしょう。
あすけんの開発チームは、新機能を試すための「Asken Lab」という特別なプラットフォームを作りました。ここでは、プロダクトマネージャー(商品企画を担当する人)が自らAIを使って試作品を作り、実際のユーザーに使ってもらいます。
使っているツールは「Claude Code」というAIコーディング支援ツールと、「AWS Documentation MCP」というAmazonが提供する技術文書システムです。
Claude Codeは、Anthropic社が開発したAI「Claude」をベースにしたツールで、自然な会話でコードを生成できます。
AWS Documentation MCPは、15,000種類以上のAmazonのクラウド技術を簡単に使えるようにする仕組みです。
これらを組み合わせることで、プロダクトマネージャーでもインフラ(サーバーやデータベースなどの基盤)を自分で構築できるようになりました。
ここで興味深いのは、バイブコーディングを導入した結果です。
多くの人は「AIが開発するなら早くなるはず」と期待します。しかし、あすけんのシニアプロダクトマネージャーである伊藤拓也氏が明かした実態は違いました。
従来なら2人月(2人のエンジニアが1ヶ月働く分)で済んでいた開発が、バイブコーディングを導入したら6人月かかったのです。つまり、開発期間が3倍に増えたことになります。
「AIで早くなるはずなのに、なぜ?」と思うかもしれません。
理由は、試作品を実際のユーザー環境でテストできるようになったからです。
従来の開発では、紙の資料やモックアップ(動かない見本)を見せて「こんな機能どうですか?」と聞いていました。しかしユーザーは想像で答えるしかありません。
一方、Asken Labでは本物のアプリとして試作品を提供します。すると、ユーザーは実際に使いながら「ここが使いづらい」「この機能があるといいな」と具体的な意見を出せます。
その結果、本当に必要な機能が見えてきて、開発の方向性を何度も修正することになりました。開発期間は増えましたが、最終的にユーザーが本当に求めるものを作れるようになったのです。
また、プロダクトマネージャーとエンジニアのコミュニケーションも大きく改善しました。プロダクトマネージャー自身が試作品を作ることで、技術的な制約を理解しやすくなり、エンジニアとの話し合いがスムーズになったそうです。
あすけんだけでなく、多くの日本企業がバイブコーディングを導入し始めています。
トランスコスモス株式会社では、AI開発ツールの導入により開発工数を87%削減したと報告されています。つまり、従来の7分の1程度の時間で開発できるようになったのです。
NTTドコモグループは、社内で「バイブコーディングトーナメント」という大会を開催しました。エンジニアだけでなく、90名の非エンジニア社員も参加し、AIを使ったアプリ開発を体験したそうです。
さらに、ZOZO、日立製作所、KDDIなどの大手企業も、全社的にバイブコーディングツールを導入し始めています。
調査会社Gartnerは「2026年までに、新規アプリケーションの75%がローコード・ノーコード技術で構築される」と予測しています。ローコード・ノーコードとは、プログラミングをほとんど書かずにアプリを作る技術のことで、バイブコーディングもその一種です。
日本IBMは2026年を「システム開発のあり方を過去40年で最も変える年だ」と表現しています。つまり、バイブコーディングは単なる一時的なブームではなく、開発の仕方そのものを変える大きな波なのです。
バイブコーディングを可能にしているのは、急速に進化したAI技術です。
特に重要なのが「LLM(大規模言語モデル)」と呼ばれるAIです。これは、人間のように文章を理解し、自然な言葉で会話できるAIのことです。ChatGPTやClaude、Geminiなどが代表例です。
最近のLLMは、プログラミング言語も高いレベルで理解できるようになりました。そのため、「こんな機能が欲しい」と日本語で伝えるだけで、適切なコードを生成できるのです。
また、「MCP(Model Context Protocol)」という新しい仕組みも重要です。
MCPは、AIが外部のツールやサービスと連携するための標準規格です。たとえば、AIがAmazonのクラウドサービスを操作したり、データベースにアクセスしたりできるようにします。
あすけんが使っているAWS Documentation MCPは、この仕組みを使ってAmazonの15,000種類以上のAPI(プログラム同士がやり取りする窓口)を簡単に呼び出せるようにしています。
2026年5月には、AWS MCP Serverが正式にリリースされ、誰でも無料で使えるようになりました(実際に使ったAWSのサービス分は別途料金がかかります)。
これらの技術が組み合わさることで、非エンジニアでも複雑なシステムを構築できる時代が到来したのです。
一方で、バイブコーディングには批判的な声もあります。
最も大きな問題は、AIが生成したコードの「保守性」です。
保守性とは、後からコードを修正したり改善したりしやすいかどうかのことです。AIが自動生成したコードは、構造が複雑だったり、なぜそう書かれたのか理由がわからなかったりすることがあります。
すると、後から別のエンジニアがそのコードを見ても理解できず、修正が難しくなります。
また、セキュリティ(安全性)のリスクも指摘されています。AIが生成したコードに脆弱性(攻撃者に悪用される弱点)が含まれていても、気づかずに使ってしまう可能性があるのです。
2025年9月には、アメリカの経済誌Fast Companyが「バイブコーディングの二日酔いが始まった」という記事を掲載しました。ベテランのエンジニアたちが、AI生成コードとの格闘を「開発地獄」と表現したそうです。
つまり、バイブコーディングは確かに開発のハードルを下げましたが、品質や安全性を保つためには、依然としてエンジニアの専門知識が必要なのです。
バイブコーディングは、AIがコードを自動生成する新しい開発手法です。
あすけんの事例からわかるのは、単に「開発が早くなる」だけではないということです。むしろ開発期間は増えましたが、ユーザーの本当のニーズを掴めるようになり、チーム内のコミュニケーションも改善しました。
日本の大手企業も次々と導入を始めており、2026年は開発の仕方が大きく変わる年になりそうです。
一方で、コードの保守性やセキュリティといった課題もあり、AIと人間がどう協力するかが今後の鍵になるでしょう。
バイブコーディングは、プログラミングを民主化(誰でもできるようにする)する可能性を秘めた技術です。今後の発展に注目していきましょう。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。
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