
「AIに手伝ってもらった文章は、本当に創造的なのでしょうか?」
多くの学生がレポートや作文でChatGPTを使う時代になりました。でも、AIを使うと文章はもっと面白くなるのでしょうか。それとも、どこかで聞いたような内容ばかりになってしまうのでしょうか。
この疑問に、米国の大学が2200本ものエッセイを使って真正面から答えを出しました。その結果は、私たちの直感を少しだけ裏切るものでした。
この研究を行ったのは、米国の名門ジョージタウン大学の研究チームです。
中心になったのは、キブム・ムーンさんやアダム・グリーンさんたちです。論文は2025年に学術誌「Computers in Human Behavior: Artificial Humans」に発表されました。
研究チームは、人間が書いたエッセイとChatGPT(GPT-4)が書いたエッセイを合計2200本集めました。そして、3つの実験に分けて比べました。
ここで使われたのが「多様性成長率」という考え方です。
むずかしそうに聞こえますが、意味はシンプルです。「エッセイを1本追加するたびに、新しいアイデアがどれだけ増えるか」を測る物差しです。
文章を数字に変換し、お互いがどれくらい「離れているか(似ていないか)」をコンピューターで計算しました。離れているほど、多様で個性的というわけです。
実験の結果は、とても興味深いものでした。
まず分かったのは、人間が書いた文章のほうが、新しいアイデアをたくさん生み出していたという事実です。
具体的には、人間のエッセイはAIのエッセイにくらべて、グループ全体で2倍から8倍も多様なアイデアを生んでいました。
つまり、人間が1本書き足すと話題がぐっと広がるのに、AIが1本書き足してもあまり広がらない、ということです。
ここで大切なポイントがあります。それは「個人」と「全体」の違いです。
AIは、ひとりの人が書く文章のレベルを引き上げてくれます。作文が苦手な人でも、それなりに整った文章が書けます。
ところが、みんながAIを使うと、全体の文章が似たような内容に集まってしまうのです。
これを研究では「均一化(ホモジナイゼーション)」と呼んでいます。一人ひとりは賢くなるのに、社会全体のアイデアの幅はせまくなる、という不思議な現象です。
では、どうしてこんなことが起きるのでしょうか。
理由はAIのしくみにあります。ChatGPTのような大規模言語モデル(人間のように文章を作れるAI)は、過去にある大量の文章を学んで答えを作ります。
そのため、どうしても「よくある言い回し」や「平均的な答え」に寄っていきます。
たとえるなら、クラス全員が同じ参考書だけで作文を書くようなものです。一人ひとりの文章はきれいでも、提出された作文を並べると、書き出しも結論もどこか似てしまいます。
研究チームはこの効果を、実際のデータでも確認しました。
2019年から2025年までの本物の大学出願エッセイ1400本(各年200本)を分析したのです。
すると、ChatGPTが広まった2022年より後のエッセイは、それ以前より明らかに多様性が下がっていました。研究室の実験だけでなく、現実の世界でも均一化が起き始めているのです。
「それなら、AIへの指示を工夫すればいいのでは?」と思った人もいるかもしれません。
研究チームも、まさにそこを試しました。
AIの設定を変えたり、「もっと個性的に書いて」とプロンプト(指示文)を工夫したりして、出力を多様にしようとしたのです。
その結果、一本一本のAIエッセイは、人間の文章より多様になることもありました。個人レベルでは工夫が効いたのです。
ところが、ここが今回の研究の一番おどろくべき点です。
工夫してAIの文章を多様にしても、グループ全体で見ると、やはりAIのほうが均一化を強めるという結果になったのです。
つまり、指示を工夫しても根本的な解決にはなりませんでした。AIに頼る人が増えるほど、全体のアイデアは少しずつ「平均」に吸い寄せられていくのです。
これまで、生成AIと創造性については意見が分かれてきました。
「AIを使うと個人の創造性が上がる」という研究も実際にあります。ビジネスを学ぶ学生を対象にした実験では、AIが発想を助けたという報告もあります。
一方で、「AIは創造的思考を弱めるのでは」と心配する研究もありました。
今回のジョージタウン大学の研究が新しいのは、この2つの見方を「個人」と「全体」という軸でつないだ点です。
下のように整理すると分かりやすいでしょう。
「便利だけど、社会全体では失うものもある」。この二面性を数字で示したことに価値があります。
この話は、海の向こうの出来事ではありません。日本でも深く関係します。
日本の大学では今、生成AIの利用が急速に広がっています。レポートや論文の下書きにChatGPTを使う学生は珍しくありません。
文部科学省も2023年にガイドラインを出し、2024年12月には改訂版(Ver.2.0)を公開しました。多くの大学が独自のルールを作っています。
そこで共通して言われているのが、「AIは答えを作る道具ではなく、学習を助ける道具」という考え方です。
ある大学生の例を考えてみましょう。締め切り前夜、レポートのテーマが思いつかず、ChatGPTに「テーマ案を10個出して」と頼みます。これは発想のヒントとしてとても有効です。
でも、そのまま提出用の文章まで丸ごとAIに書かせたらどうなるでしょうか。同じAIを使うクラスメイト全員の文章が、どこか似てしまうかもしれません。
就職活動のエントリーシートも同じです。みんながAIに頼れば、「個性をアピールする書類」が逆に没個性になるという皮肉が起きかねません。
だからこそ、AIは「最初のたたき台」や「壁打ち相手」として使い、最後の自分らしさは自分で加える。そんな使い方が、これからの日本の学生に求められそうです。
Q1. AIを使うと創造性は下がるのですか?
一概には言えません。個人で見ると、AIは作文を助けて質を上げます。ただし、多くの人が同じように使うと、全体としてアイデアが似てきて多様性が下がる、というのが今回の結果です。
Q2. 何本のエッセイで実験したのですか?
人間とAIの文章を合計2200本比べました。さらに、2019〜2025年の本物の大学出願エッセイ1400本も分析しています。
Q3. AIの設定を工夫すれば均一化は防げますか?
残念ながら、根本的には防げませんでした。指示を工夫して一本ごとの文章を多様にしても、全体で見るとAIのほうが均一化を強めたと報告されています。
Q4. 学生はAIを使わないほうがいいのですか?
そうではありません。アイデア出しや理解の補助としては有効です。大切なのは、AIに丸投げせず、自分の考えや個性を最後に加えることです。
Q5. この研究はどこが行ったものですか?
米国のジョージタウン大学の研究チームです。論文は2025年に学術誌に発表されました。
今回のポイントを振り返ります。
AIは強力な味方です。でも、使い方しだいで「みんな同じ」を生む道具にもなります。次にAIで文章を書くときは、最後のひと工夫だけは自分の言葉で加えてみてください。それが、あなたらしさを守る一番の方法です。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。
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