
この記事でわかること:
静岡県に本社を置く工作機械・小型プリンターメーカーのスター精密が、AI活用で大きな成果を上げています。2026年5月16日から6月12日までの28日間で、社内のAI利用量が従来のチャット型ツールと比べて約4倍に急増しました。
同社が導入したのは、ドキュメント管理ツール「Notion(ノーション)」とその AI機能「Notion AI」です。国内全社員約550名を対象に展開し、月次アクティブユーザー率は約90%に達しています。つまり、ほぼ全員が実際に使っている状態です。
スター精密は自動車や時計、歯科用の精密部品を加工する工作機械で世界的なシェアを持つ企業です。売上高の約9割が海外で、グローバルに事業を展開しています。そんな製造業の現場で、なぜAIがここまで浸透したのでしょうか。
実は、日本企業の多くがAI活用に苦戦しています。2026年の調査によれば、生成AIを業務で活用している企業は34.5%にとどまります。導入率は41.2%あるものの、導入しても十分に使いこなせていない企業が多いのです。
主な課題は3つあります。1つ目は「セキュリティ面の懸念」(33.5%)、2つ目は「具体的な活用アイデアが出ない」(26.0%)、3つ目は「情報の正確性への不安」(50.4%)です。
さらに深刻なのは、使いこなせない層が「課長・リーダー職」に集中していることです。現場よりも管理職や経営層の習熟が遅れており、組織全体でのAI定着を妨げています。
スター精密の情報システム部長、澤井泰範氏も同じ課題を認識していました。「生成AIは単体のチャットツールでは現場に定着しづらい」と語っています。従来のチャット型AIは業務フローと切り離されており、わざわざ別のツールを開いて質問する手間が障壁になっていたのです。
スター精密はこの課題をどう乗り越えたのでしょうか。成功の秘訣は「日常の業務そのものにAIを組み込む」ことでした。具体的には3つのポイントがあります。
ポイント1:業務基盤とAIを統合
Notionを社内ポータル、プロジェクト管理、議事録管理、ナレッジ集約のすべてを担う基盤にしました。つまり、従業員が毎日使うツールそのものにAIが組み込まれているため、特別な操作なしにAIを活用できます。
ポイント2:カスタムエージェントで業務特化
各部門のニーズに合わせた「カスタムエージェント(業務専用AI)」を構築しました。たとえば、IT部門には「QAヘルプデスク」があり、過去の問い合わせデータからAIが自動で回答を生成します。製造現場では作業手順書のFAQに即座に答えるエージェントが活躍しています。
ポイント3:AIミーティングノートで手間を削減
会議の議事録をAIが自動作成する「AIミーティングノート」機能を導入しました。これにより、会議後の議事録作成という負担が大幅に軽減され、AIの価値を実感しやすくなりました。
澤井氏は「ナレッジ活用と改善活動を同じ基盤で回せる」点を重視したと語っています。情報が業務システム、クラウド、ファイルサーバ、ローカルPCなどに分散していた状態から、一元化された基盤でAIが活用できる環境を整えたのです。
スター精密では、さまざまな部門でAIが実務に組み込まれています。いくつかの具体例を見てみましょう。
製造現場での活用
製造ラインでは、作業手順書や過去の不具合事例をAIが検索して回答します。たとえば「この機械のエラーコード205が出たときの対処法は?」と聞けば、過去の事例データベースから適切な回答が即座に返ってきます。多言語マニュアルの作成にもAIが活用されており、海外拠点との情報共有がスムーズになりました。
IT部門での活用
QAヘルプデスクでは、「パスワードをリセットしたい」「VPNに接続できない」といったよくある質問にAIが自動で回答します。これにより、IT部門の担当者は定型的な問い合わせ対応から解放され、より高度な業務に集中できるようになりました。
管理部門での活用
会議の議事録作成、プロジェクト進捗の要約、社内規程の検索など、間接業務の効率化が進んでいます。エンタープライズサーチ機能により、「出張旅費規程」や「安全衛生マニュアル」など、過去に作成された文書を横断的に検索できるようになりました。
改善活動ポータル
現場からの改善提案を受け付けるポータルも運用されています。従業員が気づいた業務改善のアイデアをNotionに投稿すると、AIが類似の過去提案を検索して参考情報を提示します。これにより、改善活動のサイクルが加速しました。
スター精密の事例から、日本企業がAI定着を実現するためのヒントが見えてきます。
まず、AIを「別のツール」として扱うのではなく、日常業務の中に自然に組み込むことが重要です。チャット型AIを導入しても、わざわざブラウザを開いて質問する手間があれば、忙しい現場では使われなくなります。スター精密のように、ドキュメント作成や会議管理など「必ず使う業務」の中にAIを配置することで、利用のハードルが下がります。
次に、各部門の具体的な業務に特化したAIを用意することです。全社共通の汎用AIだけでは「何に使えばいいかわからない」という状態になりがちです。QAヘルプデスクや作業手順書FAQのように、明確な用途を持つAIエージェントがあれば、すぐに価値を実感できます。
そして、情報の一元化も欠かせません。データが社内の複数の場所に散らばっていると、AIが正確な回答を出せません。Notionのような統合基盤にナレッジを集約することで、AIの精度と有用性が高まります。
最後に、管理職や経営層が率先してAIを使うことです。前述の調査では、管理職の習熟遅れが課題となっていました。トップが使わないツールは組織に定着しません。スター精密では全社規模で導入し、アクティブユーザー率90%を実現したことで、組織全体の意識改革につながっています。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。
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