
音楽を自動で作るAI「Suno」が、YouTubeやDeezerから数百万曲を無断でコピーして学習に使っていた疑惑が浮上しました。ハッキングで流出したコードから明らかになったこの問題は、生成AIと著作権をめぐる議論を再び激化させています。
2026年7月、テック系メディア「404 Media」が衝撃的な報道を行いました。音楽生成AI「Suno」がハッキングされ、同社のソースコード(プログラムの設計図)が流出したのです。
このハッキングは2025年11月に発生していましたが、流出したコードを分析した結果、Sunoが大手音楽プラットフォームから無断で楽曲データを収集していた証拠が見つかりました。つまり、Sunoは自社のAIを賢くするために、他人の音楽を許可なく使っていた可能性が高いのです。
ハッキングでは顧客情報も流出しており、数十万人分のメールアドレスや電話番号、決済情報の一部も含まれていたとされています。Sunoは「すぐに対処した」と発表しましたが、流出したコードの真偽については明確に否定していません。
流出したコードから判明した収集データの規模は、想像を超えるものでした。
特に注目すべきは、Sunoがアカペラバージョン(歌だけの音源)を探してYouTubeから集めていた点です。これは、ボーカルだけを取り出して学習させるための工夫だったと考えられます。
さらに、「Bright Data」というプロキシサービス(身元を隠してネットにアクセスする仕組み)を使ってYouTubeから音楽を収集していたことも明らかになりました。つまり、発覚しないよう慎重に行動していた可能性があります。
Sunoはこれまで、自社のAIが「インターネット上でアクセス可能な、ほぼすべての音楽」を学習に使っていることを認めています。しかし同時に、これは米国の著作権法における「フェアユース(公正利用)」にあたると主張しています。
フェアユースとは、著作権で保護されている作品でも、批評や研究、教育などの目的であれば許可なく使える仕組みです。Sunoは「AIの学習はこれに該当する」と主張していますが、裁判所がこの主張を認めるかどうかは未知数です。
なお、今回のハッキングで流出したコードについて、Sunoは「古いもので、もう使われていない」とコメントしています。しかし、過去に使っていたこと自体は否定していません。
現在、Sunoは世界中のレコード会社や音楽団体から訴えられています。
米国では、ソニー・ミュージックとユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)がSunoを提訴し、6万1000曲以上が無断で学習に使われたと主張しています。この訴訟の判決は2026年7月に予定されており、AI業界全体に影響を与える可能性があります。
ドイツの音楽著作権団体GEMAも独自に訴訟を起こしており、2026年7月31日に判決が言い渡される予定です。この判決は、ヨーロッパにおける生成AIの法的扱いを決める重要な前例になると見られています。
さらに、音楽配信サービスのJamendoは2026年6月、Sunoが5万5600曲を無断使用したとして2000万ドル(約30億円)の損害賠償を求める訴訟を起こしました。Jamendoは事前に1曲あたり約3万6000円を請求する請求書をSunoに送っていましたが、支払われなかったとしています。
一方で、ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)はSunoと和解し、正式なライセンス契約を結んでいます。これは「争うより協力する」方向へのシフトを示す動きとして注目されています。
音楽業界の関係者は、今回の問題を「史上最大の知的財産(IP)盗用」と呼んでいます。
調査報道メディア「The Atlantic」は、公開されているAI学習用データセットを分析し、約2120万曲もの著作権で保護された楽曲が含まれていることを明らかにしました。アーティストが自分の曲が勝手に使われているかチェックできる無料ツールも公開されています。
問題の本質は、クリエイターに一切お金が入らないという点です。通常、音楽を使う場合は著作権料を支払う必要がありますが、AI企業はそれを回避して無料でデータを集めています。これはクリエイターの収入源を奪う行為だという批判が強まっています。
この問題は日本の音楽クリエイターにも無関係ではありません。
日本では、著作権法第30条の4により、AIの学習目的であれば著作物を無断で使える余地があります。しかし、これは国内法の話であり、海外のAI企業が日本の楽曲を無断で使った場合にどう対処するかは不透明です。
また、JASRACなどの著作権管理団体は、生成AIに対する方針をまだ明確にしていません。今後、海外での訴訟結果を見ながら、日本独自のルール作りが進む可能性があります。
一方で、Sunoは日本語の歌詞生成にも対応しており、日本国内でも利用者が増えています。今回の疑惑が事実であれば、日本のアーティストの楽曲も無断で学習に使われていた可能性が高いでしょう。
今回のSuno問題は、生成AI全体が抱える根本的な課題を浮き彫りにしています。
現在、AI業界では2つの方向性が見えています。1つは「フェアユースで押し切る」戦略、もう1つは「正式にライセンス契約を結ぶ」戦略です。
最近では、大手AI企業Anthropicが15億ドル(約2250億円)の和解金を支払うケースも出ており、「訴訟リスクを避けてライセンスを買う」流れが強まっています。ワーナーとSunoの提携も、この流れの一部と言えるでしょう。
ただし、ライセンス料を払えるのは資金力のある大企業だけです。小規模なAIスタートアップは、高額なライセンス料を払えず市場から退場する可能性があります。これが「AI寡占化」を招くのではないか、という懸念も出ています。
一方、クリエイター側も一枚岩ではありません。「AIは絶対に許せない」という強硬派もいれば、「適切な対価を払うなら協力してもいい」という現実派もいます。今後の議論の行方次第で、音楽業界のあり方そのものが変わる可能性があります。
生成AIと著作権の問題は、技術の進化と法整備のスピードの差が生み出した摩擦です。今後、クリエイターとAI企業がどのように共存していくのか、2026年夏の判決が一つの分岐点になるでしょう。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。
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