xAI は 2026 年 6 月 30 日 午前 2 時(JST)、大規模言語モデル「Grok 3.5」を API および X プレミアム会員向けに正式公開した。前世代 Grok 3 から文脈窓を約 5 倍の 50 万トークンへ拡張し、X のリアルタイムポストを検索・引用する「LiveSearch」機能を標準統合。情報収集型 AI エージェントの設計図が、またひとつ書き換わった。
xAI の公式発表によると、Grok 3.5 は以下の変更を含む。
API 価格は入力 100 万トークンあたり 3.00 ドル、出力は 15.00 ドル。Think モード使用時は出力料金が 2 倍となる。X プレミアムプラス(月額 16 ドル)加入者は 1 日 200 回まで無料で利用できる。
X では発表直後からエンジニア・リサーチャー層の反応が集中した。
「Grok 3.5 の LiveSearch、プロンプト内に『X で今日の反応を調べて』と書くだけで 72 時間分の投稿を横断して回答が返ってくる。ニュースモニタリング用途ならこれだけで完結しそう」
Grok の開発ロードマップは、2025 年後半から急加速している。2025 年 9 月に Grok 3 が公開されてから約 9 か月でのメジャーアップデートは、月次に近いペースで改良を重ねる OpenAI の戦略を意識したものとみられる。
xAI は同時期に GPU クラスタ「Colossus 2」の拡張も完了しており、総計 20 万枚超の H200 相当 GPU を運用中と自社ブログで言及している。この計算資源が、50 万トークン文脈窓の常時提供を経済的に成立させていると考えられる。
また、X 上のデータを学習・推論の双方に活用できる点は、xAI 固有のアドバンテージだ。他モデルがウェブ検索 API(Bing・Google)経由でリアルタイム情報を補完するのに対し、Grok は X の一次ストリームに直アクセスできる。SNS 上の「未整理な一次情報」を扱う分析エージェントにとって、これは質的な差になる可能性がある。
書籍 1 冊が約 10 万字(≒ 10 万トークン)とすると、50 万トークンは文庫 5 冊分を一度に処理できる計算になる。法務・財務のデューデリジェンス、長大なコードベース解析、複数会議録の横断サマリーといった業務に直接刺さる。
従来の RAG(Retrieval-Augmented Generation)パイプラインでは、情報取得・インデックス・検索を外部で実装する必要があった。LiveSearch は X データに限定とはいえ、この工程をモデル内部に取り込む。「X データが必要な情報エージェント」においては、構成部品の数が 1 つ減る。
推論の途中経過を API で取得できる設計は、エージェントが「なぜその結論に至ったか」をログとして残す際に有効だ。規制対応・監査要件が厳しい金融・医療領域での採用障壁が下がると見られる。
入力 100 万トークンあたりの価格帯は、GPT-5(約 5 ドル)・Claude 4 Sonnet(約 3.50 ドル)と比較して Grok 3.5 の 3.00 ドルは現時点で最安水準に近い。Think モード込みでも総コストで競合するケースが出てくるであろう。
Grok が「X を読める唯一のモデル」という立場を維持し続けることが、この先の生命線になると見ている。
ウェブ検索統合は OpenAI・Google・Anthropic のいずれも実装済みだが、X のストリームはクローズドだ。LiveSearch が高精度であれば、ジャーナリズム・マーケティング・金融リサーチの現場では「Grok 一択」になる業務が出てきてもおかしくない。
一方で注意すべき点がある。X 上のデータは誤情報・ノイズ密度が高く、LiveSearch がどこまでファクトチェック機能を持つかは現時点で不明だ。72 時間のリアルタイム性を信頼しすぎると、未検証情報をそのままエージェントの判断根拠にするリスクがある。出力の引用元 URL を必ず確認する運用設計が、当面は必須と考えるべきだろう。
エージェント基盤としての Grok の成否は、LiveSearch の精度と API の安定性が試金石になる。今後 2〜3 週間の開発者コミュニティの評価が、採用判断の最初の分岐点になるとみられる。
Grok 3.5 は「X を読める情報エージェント」という固有ポジションを、より強固な技術仕様で補強してきた。50 万トークン・LiveSearch・Think モード API の三点セットは、リアルタイム情報を扱うエージェント設計において無視しにくい選択肢となる。
次の焦点は、他社がどう X データへのアクセスを補完するかだ。OpenAI が独自のソーシャルデータ提携を進めるか、Google が X との連携を模索するか——あるいは xAI がこのアドバンテージを守り切るか。あなたのエージェントスタックに Grok が入る余地はあるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(AIニュース)が執筆しています。