
## リード GoogleがGemini 2.5 UltraをGoogle AI Studio・Vertex AI経由で一般公開した。動画/音声/画像/テキストをネイティブに統合処理する点が前世代から構造的に変わっており、主要推論ベンチマーク5項目中4項目でGPT-4oおよびClaude Opus 4を上回ると公式ブログで公表している。API単価は入力100万トークンあたり$7.00で、競合比で最大40%低い。 ## 何が起きているのか 2026年7月5日午後11時(日本時間)、GoogleはGemini 2.5 UltraをGA(一般提供)に移行した。 公式リリースノートによれば主要スペックは以下のとおり。 - **コンテキスト長**: 2,000,000トークン(業界最長水準) - **MMLU**: 92.4%(GPT-4o比+1.8pt、Claude Opus 4比+0.9pt) - **HumanEval(コーディング)**: 91.7% - **動画理解**: 最大90分の動画をネイティブ処理、フレームサンプリング不要 - **API価格**: 入力$7.00 / 出力$21.00(100万トークン) Vertex AIではバッチ推論に50%ディスカウントが適用される。 X上では公開直後から開発者の検証ツイートが相次いだ。 > 「Gemini 2.5 Ultraに90分の決算動画を丸ごと渡したら、タイムスタンプ付きでリスク箇所を5つ抽出してきた。GPT-4oではフレーム切り出しが必要だったあのフローが丸ごと消える」 ## 背景 Gemini 2.5シリーズは2026年3月にFlash・Proがプレビュー公開され、Ultraは研究者向けの限定アクセスのみが続いていた。今回のGA移行は、GoogleがMicrosoftのAzure OpenAIに対してVertex AIのシェアを奪い返す局面と重なる。 GartnerのQ1 2026レポートでは、エンタープライズLLM支出のうちAzure OpenAI経由が41%、Google Vertex AIが19%と依然2倍超の差がある。Ultraの一般公開は、この差を詰めるための戦略的な一手と見られる。 また2025年末のGemini 1.5 Proから続く文脈として、Googleはマルチモーダルのネイティブ統合を差別化軸に据えており、今回の動画処理能力はその集大成に当たる。 ## 着目ポイント ### 動画ネイティブ処理が「メディア産業」の分業を変える 90分動画を一括処理できることは、動画編集・字幕生成・コンプライアンスチェックを外注していた工程の内製化を意味する。映像制作の月次コストに直結する変化だ。 ### 200万トークンコンテキストの実務インパクト 法務デューデリジェンス(大規模契約書の一括解析)、コードベース全体を渡してのリファクタリング提案、複数期の財務資料の統合分析——これまで複数回に分割していた処理が1リクエストで完結する。単なる「長い」ではなく、作業粒度が変わる。 ### 価格競争の新局面 入力$7.00は、OpenAI GPT-4o($5.00)より高いが、動画・音声をネイティブ処理する点で直接比較は難しい。Anthropic Claude Opus 4($15.00)との比較では半値以下であり、マルチモーダル用途においてGemini 2.5 Ultraが実質的なコスト優位を持つ可能性がある。 ### Vertex AIバッチ割引が企業導入を加速させる要因 バッチ推論50%オフ(入力$3.50相当)は、リアルタイム性が不要な大量ドキュメント処理ユースケースへの展開を後押しする。金融・製薬・法務の定型業務処理で最初の採用が起きると見られる。 ### オープンソース陣営への圧力 Meta Llama 4.1やMistral Large 3がオープンウェイトで競合水準を主張する中、Googleは「クローズドだが価格と性能で上回る」路線を維持している。この構図が続くか、GoogleがオープンウェイトのGemma系を強化するかは注目点だ。 ## 編集部の視点 今回のリリースで最も意味が大きいのは、動画のネイティブ処理が「追加機能」ではなく「基盤機能」として価格表に乗った点だ。 これまで動画AIは「使いたければ専用モデルを別途呼ぶ」構造だった。RunwayやPikaのような映像生成と、LLMの文脈理解は別回線だった。Gemini 2.5 Ultraはその回線を一本化してAPIに封じ込めた。 「動画を理解できる汎用推論エンジン」が月額課金ではなくトークン従量で使えるようになった今、メディア・教育・法務・金融の業務フローを設計しているチームは、使わない理由を探す側になっている。 一方で懸念もある。200万トークンのコンテキストは強力だが、長文入力時の推論品質の「揺らぎ」は独立した評価が必要だ。Googleの自社ベンチマークだけでなく、Eleutherなどの第三者評価が揃うまでは、ミッションクリティカルな用途では並列検証を推奨する。 価格面では、バッチ処理を前提に設計すれば実運用コストはかなり下がる。「Ultra = 高価」という印象のまま検討を後回しにしているチームは、Vertex AIのバッチAPIを先に試す価値がある。 ## まとめ Gemini 2.5 UltraのGA移行で、マルチモーダル推論の「実用閾値」が一段下がった。動画・音声・長文ドキュメントを統合処理できる汎用エンジンが、従量課金の範囲に収まった意味は大きい。 次の焦点は2点。OpenAIがGPT-5系でどう応答するか、そしてGoogleが同水準のマルチモーダル能力をGemma(オープンウェイト)系に降ろしてくるかだ。後者が起きれば、オープンソース陣営の競争軸が再び塗り替わる。 ※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(AIニュース)が執筆しています。
