日本映画初のキスシーン80周年——1946年「はたちの青春」GHQが変えた銀幕の空気

今日は「キスの日」だ。1946年5月23日、映画「はたちの青春」が公開され、日本映画史上初のキスシーンが銀幕に映し出された——あれからちょうど80年。X(旧Twitter)では朝からこの日付を取り上げるポストが相次いでいる。「たかだか数十年の違いで価値観って変わるんだな」という声がある通り、あの数秒は日本の芸能地図を静かに塗り替えた起点だった。
5月23日、「キスの日」「恋文の日」のダブルハッシュタグがXで拡散された。その多くが触れるのは1946年の出来事だ。
「1946年の今日、日本で初めてキスシーンが登場する映画が公開されたそうです。当時は人前でキスなんて…という時代でしたが、GHQからの指導もあり採用されることになったのだとか。たかだか数十年の違いですけど価値観て変わるんだなと思う話ですよね」
映画「はたちの青春」(佐々木康監督)は1946年5月23日に公開。俳優・大坂志郎と相馬千恵子による数秒のキスシーンは、日本初の映像記録として映画史に刻まれた。80年後の今、あの場面を知る人はほとんどいない。だからこそ、一旦止めて構造で語る価値がある。
終戦直後の日本、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は1945年から検閲・文化政策を通じて日本社会の「民主化」を推進していた。映画もその対象で、封建的・軍国主義的な表現は排除される一方、西洋的な親密表現を導入するよう圧力がかかった。
当時の日本映画界にとって、公衆の面前でのキスは「あり得ない」行為だった。儒教的な価値観が根強く、恋愛表現は間接的に描くのが慣例。それでも制作陣はGHQの方針を受け入れ、「はたちの青春」にキスシーンを組み込んだ。公開後の反響は賛否が割れたとされるが、封切り翌日に大きな抗議があったという記録はない。静かに、しかし確実に「銀幕の空気」が変わった瞬間だった。
終戦からわずか9ヶ月。日本映画は年間制作本数が戦中の最盛期の半分以下に落ち込み、スタジオも人員も疲弊していた。そのタイミングでの「初キスシーン」は、制作側の自発的挑戦というより、外圧と時代の変化が重なった産物だ。
GHQは1945年9月に「プレスコード」を発令し、映画・出版・放送を検閲下に置いた。封建的な内容を禁じる一方、民主的とされる表現(男女平等・恋愛の自由)は積極的に奨励した。80年前のキスシーンは、この「上からの自由化」の象徴だった。
現在の映画・ドラマでは、キスシーンの有無や撮影方法が事前にキャスト間で確認される「インティマシー・コーディネーター」制度が定着しつつある。1946年が「入れる時代」への転換点なら、2020年代は「どう撮るかを当事者が決める時代」への転換期だ。80年でまた一歩、表現の主体が変わっている。
公開時に20代だった人は今年100歳前後。作品を実際に映画館で見た世代はほぼいない。アーカイブとしてフィルムが残っているが、一般公開の機会は限られる。節目の80年、映画館やストリーミングでの上映企画が出てきてもおかしくないタイミングだ。
5月23日は「こ(5)いぶ(2)み(3)」の語呂合わせで「恋文の日」でもある。ダブルで恋愛系の記念日が重なることで、X上での拡散量が単独記念日より広がりやすい構造がある。実際、今朝のポストは「キスの日」「恋文の日」のどちらのタグもほぼ同数で流れていた。
事務所にいたころ、担当タレントのラブシーンをどう扱うかで局と揉めたことが何度かある。「どこまでOKか」を事前にすり合わせる作業は、思った以上に細かくて、感情的にもなる。それを思うと、1946年の現場の人たちは何も決まっていない状態で「とにかくやれ」という状況だったわけで——それはそれで相当しんどかったはずだと、業界人として想像する。
80年という数字は長いようで、映画の歴史でいうと一世代分にも満たない。日本映画が生まれたのは1896年ごろとされるから、「初キスシーン」まで約50年かかったことになる。そこから現在のインティマシー・コーディネーター導入まで80年。変化のスピードは確実に上がっている。
今年はこの節目を受けて、映画史を振り返る特集やトークイベントが出てくる可能性がある。NetflixやAmazon Primeの独自ドキュメンタリーが拾えるテーマでもある。「日本映画の80年」というフォーマットは、コンテンツとして普通に面白い。どこかの配信が動くなら、早い段階でその話を聞いてみたいところだ。
1946年5月23日のあの数秒が、日本の芸能・映画文化の「空気の変わり目」だった。GHQという外圧がきっかけだったとしても、その後の80年で表現の主体は制作者側、そして出演者本人へとシフトしてきた。今日「キスの日」を祝うXのポストを見ながら、80年後の2106年には何がどう変わっているのか——そんな問いを立てることが、エンタメ史を読む面白さだと思う。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(立花レオン)が執筆しています。
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