配信ライブ市場が2026年上半期に過去最高更新——芸能事務所の"推し活"戦略が変わる瞬間

2026年上半期、国内の配信ライブ市場が前年同期比28%増という過去最高の数字を叩き出した。コロナ禍で急拡大したあの市場が「定着」ではなく「進化」していることを、この数字は示している。事務所もタレントも、もう「リアルの代替」として配信を使っていない。ここで一旦止めて、この変化の構造をちゃんと読んでおきたい。
調査会社のMMD研究所が2026年7月1日に発表したレポートによると、2026年1〜6月の国内配信ライブ市場の総流通額は推計890億円。2025年同期の695億円から28%増となり、2020年以降で最大の伸びを記録した。
プラットフォーム別ではYouTube Liveが全体の約34%を占め首位を維持しているが、注目は国内勢のSHOWROOMと17LIVEがそれぞれ前年比15%・22%増と堅調に伸びている点だ。
X(旧Twitter)でも反応は早かった。
「今年に入って推しの配信グッズが物販でも売れてる。リアルとデジタルの境目が消えてきてる感じ」(フォロワー1.2万のファンアカウント、いいね数2,400)
この"境目"という言葉が、今の業界のど真ん中を突いている。
もともと配信ライブがここまで定着したのは、2020〜2022年のコロナ禍がきっかけだ。会場を使えなくなった事務所がデジタルに迫られて舵を切り、ファンもスマホ1台で全国・全世界から推しを追えることを覚えた。
ただ2023〜2024年はリアルライブの復活とともに「配信は補助」という位置付けに戻りかけていた。事務所の温度も正直、現場優先だった。それが2025年後半から再び変わった。きっかけの一つが「ライブコマース」の本格参入だ。
配信中にグッズをリアルタイムで販売するライブコマース機能をYouTubeが国内向けに強化したのが2025年10月。以降、大手事務所を中心に試験導入が続いている。単なるチケット収益ではなく、配信1本あたりの物販売上を直接計上できる仕組みが整いつつある。
従来のライブビジネスは「会場チケット+物販」が軸だった。配信はせいぜい有料視聴チケットの追加収入。だが今は「配信中のスーパーチャット+ライブコマース物販+後日アーカイブ販売」の3層構造が整いつつある。1本の配信で複数の収益口を持てるのは、経営的に大きな変化だ。
2026年4月のオリコン調査では、推し活ユーザーの月平均支出額は約12,400円。このうち「配信関連(有料視聴・投げ銭・ライブコマース購入)」が占める割合が31%と、初めてリアルグッズ購入(29%)を上回った。金額が逆転したのは今回が初だ。
リアルライブはどうしても都市圏に集中する。配信は地方ファンに等しくアクセスを開く。実際、主要配信プラットフォームのユーザー分析では、2026年上半期に地方ユーザーの課金率が前年比で14%伸びている。
配信中のハイライトがXやTikTokに流れ、それを見た新規ユーザーが配信に流入する——このサイクルが回り出している。業界的に言うと「タイムシフトじゃなくてタイムラグ拡散」。この構造は事務所がコントロールできるわけじゃなく、むしろファン主導で動いている。
マネージャー営業をやっていた時代に、配信は「本番の前の練習」みたいな扱いをされていた。事務所にとって配信はPR手段であって、収益の本丸じゃなかった。それが今は変わっている。
業界の人ならピンと来るやつなんだけど、事務所がライブコマースに本腰を入れるということは、タレントの「売り方」の設計が根本から変わるということだ。何を配信で売って、何をリアルの現場に残すか——その棲み分けを間違えると、ファンの熱量がどこかで抜ける。
デスクをやっていた頃に何度か取材した「推し疲れ」の案件を思い出す。投げ銭・グッズ・チケットと課金ポイントが増えるほど、ファンの疲労も蓄積する。890億円という数字の裏に、どれだけのファンが財布と相談しながら推しを追っているか。そこは見ておきたい。
事務所の戦略転換は正しい方向だと思う。ただ速さで突っ込みすぎると、ファンとの温度差が出る。「これ、推しに刺さるやつ」を設計するには、ファン側の体力も一緒に読まないといけない。
2026年上半期の配信ライブ市場890億円という数字は、「コロナの遺産」ではなく「新しい芸能ビジネスの起点」として読むべきだ。事務所の収益モデルもファンの消費行動も、リアルとデジタルが溶け合う方向に動いている。問題は速度ではなく、設計の精度。あなたの推しの事務所は、この波をどう乗りこなすだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(立花レオン)が執筆しています。