「レコードを買う週末」が戻ってきた——音楽を「所有する」若者が増えている2026年

ストリーミングで何万曲も聴ける時代に、あえてレコード盤を手にとる若者がいる。中古レコード店の週末には20〜30代の姿が目立ち、新品の12インチ盤を抱えてレジに並ぶ光景は、もはや珍しくない。「音楽を所有する」という感覚が、2026年の都市にひっそりと戻ってきている。
国内の中古レコード販売を手がける複数の店舗によると、2025年末から2026年にかけて、若年層(20〜35歳)の来客数が前年比で約18%増加している(一部店舗調査)。日本レコード協会の2025年データでは、アナログレコードの国内生産量が前年比112%を記録。コロナ禍以降の底打ちから、本格的な回復局面に入ったとみられる。
X(旧Twitter)では、こんな声が流れている。
今日、下北沢のレコード屋で1時間半迷って2枚だけ買った。Spotifyで同じ曲を今すぐ聴ける。でもこの「選ぶ時間」が好きなんだよなあ
「今すぐ聴ける」より「選ぶ時間」を選ぶ、という逆転が、ちょっと面白い。
なぜ今、アナログ回帰が起きているのか。背景のひとつは「サブスク疲れ」だ。SpotifyやApple Musicの月額料金は2024〜2025年にかけて値上げが続き、国内でも複数サービスが10〜30%の値上げを実施した。便利なはずの聴き放題が「なんとなく流れている音」になってしまう感覚を持つユーザーが増え、積極的に何かを聴こうとする意欲が薄れてきた、という声は取材のなかでも繰り返し聞いた。
もうひとつは「モノとの関係性」の再構築だ。巣ごもり需要をきっかけに自室の環境を整えることへの関心が高まり、レコードプレーヤーをインテリアとして置く若者も増えた。家具・インテリアECでのターンテーブル検索数は2023年比で約2倍になったとの報告もある。「置いてあるもので、自分を語る」という感性の延長線上に、レコードがある。
ストリーミングは検索すれば0.5秒で再生できる。レコード店では1枚選ぶのに30分かかることもある。その「遅さ」が逆に豊かに感じられる——美術館でじっくり絵を見る感覚に近い。効率を手放すことで生まれる集中が、音楽の聴こえ方まで変える。
新品盤は1枚2,500〜5,000円が相場で、初期投資のハードルが高い。一方で中古なら300〜1,000円から入れる。レコードが好きな人なら、この価格帯の引力は多分刺さる。下北沢、吉祥寺、大阪の堀江など、若者が多い街のレコード店が「発掘の場」として機能し、口コミと週末の目的地を兼ねている。
「レコード針を落とす瞬間」の動画が、TikTokで繰り返し再生される。#vinyl タグのグローバル再生数は2025年末時点で80億回を超えた。アナログ体験をデジタルで共有するという逆説が、10〜20代の入り口になっている点は見逃せない。
70〜80年代の邦楽、廃盤になったシティポップ盤、マイナーなジャズの自主制作盤——これらはレコードでしか聴けないものが今も多い。「探す理由」が存在する限り、レコード店に足を運ぶ動機は途絶えない。
私自身、3,000枚を超えるレコードを持っている。自慢ではなく、単純に積み重なった結果だ。始めたのは20代後半で、最初の1枚は大学近くの古書店の隅に置いてあった400円のシティポップ盤だった。
「このジャケットの女性、誰だろう」と手に取って、帰宅して針を落として、自分だけの発見になった瞬間の静かな興奮は今でも覚えている。ストリーミングのアルゴリズムが「あなたへのおすすめ」として差し出すのとは、まったくちがう体験だった。
面白いのは、今の20代がレコードに向かう理由が、私が最初に感じたものと重なっていること。「自分で選んだ感」「手元に残るもの」「偶然の出会い」。効率より偶発性を求める欲望が、確かにある。
これは音楽だけの話ではないと思う。本も映画も食も——「おすすめ」で最適化されすぎた日常に、小さな亀裂が入り始めている。レコード店の週末の賑わいは、その亀裂のひとつの形だ。
「音楽を所有する」という選択は、単なるレトロ趣味ではない。アルゴリズムに選ばれることへの静かな抵抗であり、自分の感性で何かを選ぶ練習でもある。あなたの週末に、1枚だけ「探す音楽」を加えてみたら、何が変わるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。
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