孤独・孤立対策法が施行2年——相談窓口は増えたのに「つながれない人」が残る構造

孤独・孤立対策推進法が施行されて2年が経つ。政府は都道府県・市町村に対策計画の策定を求め、相談窓口の開設が各地で進んだ。だが、内閣官房の直近の調査では、孤独感を「しばしば感じる」「常に感じる」と答えた人の割合は施行前とほとんど変わっていない。まず事実から確認しておく。
孤独・孤立対策推進法は2023年5月に成立し、2024年4月に施行された。国と自治体が協力して孤独・孤立の実態把握と支援策を講じる義務を定めた法律で、施行から2年、47都道府県すべてが対策計画を策定済みだ。市区町村レベルでも相談窓口の整備が進んでいる。
一方、X(旧Twitter)では6月21日夜から「孤独死」「おひとりさま」がトレンド入りした。東京都が公表した2025年の孤立死推計件数は約3万2000件で、前年比約4%増加している。
「電話相談の番号を知っていても、電話する気力がない状態になったらどうするの。窓口を作っただけで『支援している』とは無理がある」
制度整備と実態との乖離が、改めて問われている。
日本の単独世帯数は2020年の国勢調査で全体の38.0%に達し、2030年には40%超と推計されている。65歳以上の一人暮らし高齢者は約700万人で、20年前の約2倍だ。
孤独・孤立が政策課題として浮上したのはコロナ禍が大きな契機だった。2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」ポストが新設され、イギリスの「Loneliness Minister」を参照した形での政策化が進んだ。任意の取り組みでは不十分との判断から法制化まで2年を要した。
ただし、法律が定める「支援」の内容は情報提供・相談・つなぎ・見守りの4層であり、給付や直接支援には踏み込んでいない。自治体の裁量に委ねられる部分が大きく、財政力の差が支援の質に直結しやすい構造になっている。
相談窓口は整備されたが、孤立している人は「相談する」行動自体を取りにくい。厚生労働省の2024年調査では、孤独を感じながら「相談したことがない」人は73.4%に達した。届けたい層ほど、制度のアクセスが難しいという構造的矛盾がある。
内閣官房の2023年調査によれば、孤独感を感じる割合は20代(35.6%)が全年齢層で最も高い。高齢者の孤立死が注目されがちだが、若年層の孤立は就労・精神健康・引きこもりと連鎖しやすく、長期的な影響がより大きい。
計画策定率は100%でも、NPO連携の実績や相談員の配置数は自治体によって大きく異なる。人口10万人当たりの相談件数が最多と最少の自治体で約8倍差があるとする調査もある。「計画がある」と「機能している」は別の話だ。
「待つ支援」から「出向く支援」への転換が求められて久しいが、プッシュ型支援に必要な個人情報活用とプライバシー保護の間に制度上の障壁がある。訪問支援員の確保も、多くの自治体で人手不足が続いている。
これは孤独の問題というより、制度設計と対象者へのリーチの問題に近い、と私は見ている。
地方支局時代、過疎地域の独居高齢者を取材したことがある。担当の民生委員は一人で数十世帯を受け持っていた。相談の番号を知っていても、電話する前に誰かが気づくことのほうが先だ——あの現実から、今の制度はどれだけ進んだだろうか。
立場Aの見方をすれば、法律ができて計画策定が義務化されたことで、これまで担当部署すらなかった自治体にも「孤独担当」が生まれた。制度の入口ができた意義は軽くない。
立場Bからすれば、相談件数を成果指標にしている自治体が多く、「件数が増えた」は「救われた人が増えた」ではない。アウトカム指標への転換が急がれるという批判は正当だ。
構造的に言えば、孤立の問題は制度だけでは解けない。地域の人間関係の密度、公共施設のあり方、集合住宅のコミュニティ設計まで含めた社会インフラの問題として捉え直す必要がある。窓口を増やすことと、社会のつながりを再設計することは、車の両輪だ。
孤独・孤立対策法の施行は、問題を「個人の問題」から「社会の課題」へと位置づけ直した点に意味がある。だが制度は「入口」を作っただけで、最も孤立している人に届く「出口」の設計はまだ途上だ。来年の法施行3年目には、政府による実態調査の見直しが予定されている。数字の変化をどう読むか——それが問われる局面が近づいている。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。