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「AIで開発が3倍速くなった」という話を聞いて、うちも入れようかと迷っていませんか。ハーバード大学の研究者が700社超のデータを調べたところ、コードは増えても完成した仕事は増えていませんでした。この記事では、その理由と導入のヒントを整理します。
2026年10月9日、Ars Technicaが、ハーバード大学のFiona Chen氏とJames Stratton氏による研究を報じました。タイトルは「AIコーディングエージェントはコードを増やすが、ソフトウェアは増えていない」です。
調べたのは、エンジニアリング分析会社Jellyfishが集めた700社超のソフトウェア企業のデータです。対象は70万人超の従業員で、2021年から2026年3月までの約3億件の作業記録(コミットやプルリクエストなど)が使われました。
コーディングエージェントとは、人が指示すると自分でコードを書き、修正まで進めるAIのことです。研究は、各社がこれを導入した前後で、活動量がどう変わったかを比べています。
導入後、各社は平均で次のように変わりました。
ここまでは「AIのおかげで生産性が上がった」と読めます。
ところが、Jiraで管理されている課題(バグ修正や機能追加などの仕事)の解決率には、統計的に意味のある改善が見られませんでした。つまり、書かれたコードの量と、終わった仕事の量が連動していなかったのです。
引っ越しで段ボール箱ばかり運び込まれ、荷ほどきの終わった部屋が増えない状態に近いでしょう。
研究者が注目したのは、コードを書いたあとの確認作業です。プルリクエストは、ほかの人が読んでOKを出してから本体に取り込まれます。この作業をレビューと呼びます。
導入後のレビューには、次の変化が出ました。
想像してみてください。AIのおかげで、チーム全員が出す変更依頼が増えたとします。レビュー担当者の時間は変わらないので、確認待ちの列は長くなる一方です。しかも直しの指摘まで増えるため、依頼と修正を何度も行き来することになります。
2026年3月の時点で、測定した企業の80%がAIによるコードレビューを使っていました。AIはレビューコメントの23.3%、プルリクエストの10.8%に関わっています。それでも流れの詰まりは解けていません。
この結果は単独ではありません。全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパー「Writing Code vs. Shipping Code」は、GitHubの開発者50万人超を調べました。
コミット数への累積の効果は、オートコンプリート(入力補完)が30%、対話型エージェントが180%、自律型エージェントが240%でした。ところが、プロジェクト数では80%、リリース数では30%まで縮みます。
著者らは、AIの作業と人間の作業が強く補い合う関係にあるためだと見ています。人間の作業が弱い輪となって、全体の速さを決めるという考え方です。AIと人間の作業の代替しやすさを示す数値(代替の弾力性)は0.23と推定されています。
さらに、4つの大きなアプリ市場では、新しいアプリが大きく増えたのに、総利用量は増えていませんでした。
AIの生産性を測る研究は、結果が割れてきました。主な3つを並べます。
METRの実験では、開発者は事前に「24%速くなる」と予想し、終わったあとも「約20%速くなった」と感じていました。実際は逆だったのです。
ただしMETR自身が、この結果はすでに古いとしています。2026年2月に、2025年後半のツールで新しいデータを出しました。研究ごとに対象や期間が違うので、数字を直接比べるのは危険です。
今回の研究が調べたのは海外の企業で、日本の会社を直接見たものではありません。それでも、レビューで流れが詰まるという構造は、日本のチームにも当てはまる可能性があります。
たとえば、3人でAIを導入した小さな開発チームを考えてみましょう。1人あたりの変更依頼が倍になっても、レビューできるのが経験の長い1人だけなら、その人に仕事が集中します。新機能のリリースは、かえって遅れるかもしれません。
外注に開発を任せる会社も同じです。納品されるコードが増えても、検収(受け入れの確認)をする人が足りなければ、完成は早まりません。
導入の効果を測るときは、コードの行数よりも、課題の完了数やリリースまでの日数を見ることが大事です。
この研究にも限界があります。観察データなので、エージェントがすべての変化の原因だとは言い切れません。
データは2026年3月で終わっているため、その後に出た新しいツールや使い方の変化は測れていません。49%という数字も、レビューの経過時間であり、人が実際に作業した時間ではありません。
また、「AIで新しいソフトウェアが増えない」と言っているわけでもありません。見つかったのは、追跡された課題の完了数に、統計的に意味のある改善がなかったという点です。
一方で、MacStoriesが紹介したAppfiguresの調査では、2026年1〜3月のアプリ公開数が前年同期より60%増えています。ただし筆者のJohn Voorhees氏も、この種の数字は慎重に見るべきだと書いています。
役に立たないとは言えません。コードの行数やコミットは増えています。ただ、完了した仕事の増加までは確認できなかった、というのが今回の結果です。
測定した企業の80%がすでにAIレビューを使っていますが、研究では詰まりが解けていません。AIに任せるだけでは足りない可能性があります。
今回の研究は日本の企業を直接調べていないので、断言はできません。自社の課題完了数やリリース頻度を測って確かめるのが確実です。
まだ分かっていません。データは2026年3月までで、その後の新しいツールは含まれていないためです。
まずは自分のチームで、コードの量ではなく、課題の完了数とレビュー待ちの時間を測ってみてください。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。