Google DeepMindは2026年8月9日(太平洋時間)、フラッグシップモデル「Gemini 2.5 Ultra」を一般公開した。コンテキスト窓を業界最大級の200万トークンに拡張し、GPQA(科学的推論ベンチマーク)で92.3%という新SOTAを記録。法律文書・金融開示・論文精査といった「長文+高精度推論」が求められる業務の設計前提が、実務レベルで動き始めた。
Google DeepMindはGoogle AI StudioおよびVertex AI経由でGemini 2.5 Ultraの一般提供を開始した。前世代のGemini 2.0 Ultraと比較して、コンテキスト窓を100万トークンから200万トークンへ倍増。API価格は入力1Mトークンあたり$18、出力$54に設定されている。
公開直後、X上では実務ユーザーからの検証報告が相次いだ。
「Gemini 2.5 Ultra に1,500ページの判例データベースを丸ごと流し込んだら、特定条文との照合を3分で完了。法務チームが半日かけてた作業が変わる」
GPQA(Graduate-Level Google-Proof Q&A)スコアは92.3%と公開モデルで最高水準。MATHベンチマーク(数学推論)でも97.1%を記録し、OpenAI o3(96.4%)をわずかに上回る形となった。
Gemini 2.5 Ultraは、2026年3月公開のGemini 2.5 Proに続く同シリーズ最上位モデルとして位置づけられる。Proが推論速度と価格効率を優先した設計だったのに対し、Ultraは精度・文脈長を最大化したフラッグシップとして明確に差別化されている。
コンテキスト窓200万トークンは、英語テキスト換算で約2,000ページ分に相当する。これにより、従来は「分割して処理」するしかなかった長大な法律文書・財務報告書・研究論文群を一括で読み込ませ、横断的な照合や矛盾検出が可能になる。
Googleは同時に、Gemini 2.5 Ultraを搭載したNotebookLM Proのアップグレードも発表。研究者向け論文分析ワークフローとの統合を強化している。
200万トークンは単なるスペック競争ではない。3,000行を超えるコードベース全体、または1年分の契約書群を「一つの文脈」として扱える。分割処理による「文脈切れ」リスクが消え、参照関係の多い文書で特に効果が大きいとみられる。
GPQA 92.3%は「博士レベルの科学的質問の大半に正答できる」水準とされる。創薬・材料科学・金融工学など、専門的推論を必要とする業種における補助ツールとしての活用可能性が一段と広がった。
今回からVertex AI上でのファインチューニングオプションも提供される。業種固有の用語・文書スタイルへの対応が容易になり、Googleが汎用モデル市場を超えて「業種特化モデルのプラットフォーム競争」に本格参入したとみることができる。
入力$18/1Mトークンはリリース中でも高コスト帯に位置する。ただし200万トークンを一括処理できることで、従来複数回のAPI呼び出しが必要だったフローをまとめられる場合、実質コストが逆転するケースもあると見られる。200万トークンをフル活用すると1回の推論コストが$36超になる点は注意が必要だ。
NotebookLM Proへの組み込みは非エンジニア層への普及を加速させる可能性がある。法務・コンプライアンス・研究職がAPIを介さずに長文推論を利用できる経路として機能する。
Gemini 2.5 Ultraの公開で最も注目すべきは「スコアの高さ」よりも「文脈長の倍増」だ。これまでLLM活用の設計でボトルネックだった「分割してプロンプトを組み直す」作業が、多くのユースケースで不要になる。
法務・金融・製薬など、文書の「全体像」を一気に把握する必要がある業種では、これは単なる利便性向上ではなく、ワークフロー設計の前提そのものが変わることを意味する。複数回の推論ループを組んでいた設計を、1回の推論に集約できるシナリオが明確に増えるだろう。
一方でコスト面は慎重に設計すべきだ。「とりあえず全部流し込む」設計では月次コストが予想を大きく超える可能性がある。「どの文書を、どの粒度で、どの頻度で処理するか」のコスト設計が導入判断の核心になる。
Vertex AIでのファインチューニング提供は、Azure OpenAIとのエンタープライズ競合をいよいよ本格的な業種特化モデル戦争へと引き込む一手だ。GPT-4oの$5/1Mという価格帯と比較した場合の「精度×コスト×文脈長」のトレードオフを、業種ごとに具体的に試算できる段階に入ってきた。
Gemini 2.5 Ultraは「モデル性能のさらなる向上」という軸だけでなく、「文脈長」という設計の自由度拡大という点で実務的インパクトが大きい。200万トークンという数字を「スペック表のデータ」ではなく「業務設計の変数」として読む必要がある。
次の焦点は2点——OpenAIがo4系でコンテキスト長競争に正面から応戦するか、そしてVertex AIのファインチューニング価格が企業の乗り換え判断をどこまで後押しするか。年内に「長文脈×業種特化」の実績ケースが積み上がれば、採用判断の重みが一気に変わるだろう。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(AIニュース)が執筆しています。