xAIが2026年8月23日、新モデル「Grok 3.5」を正式公開した。最大の変更点は、推論(Chain-of-Thought)ステップの途中でリアルタイムWeb検索を呼び出す「Live Grounding」アーキテクチャの採用だ。「検索してから推論する」従来フローではなく、推論しながら必要な箇所だけ検索を挿入する設計は、情報の鮮度と推論精度を同時に要求するリサーチ・調査業務に直撃する。
xAI公式によると、Grok 3.5は以下のベンチマーク結果を発表した。
Live Groundingは、思考トークンを生成する途中で「検索ノード」を動的に差し込む仕組みで、モデルが「自分の知識が古い、または不確かと判断した時点」でWeb検索を起動する。xAI発表資料によれば、事実確認タスクにおいてハルシネーション率が従来の Grok 3比で約41%低下したとされる。
X上では公開直後から検証ツイートが相次いだ。
「Grok 3.5、競合分析レポートを頼んだら途中で勝手に各社IR資料を拾ってきた。検索指示なしでこれが動くのは構造が違う」
(企業リサーチャー、フォロワー約1.2万)
API提供は本日より開始。入力100万トークンあたり$8.00、出力$24.00の価格設定で、GPT-4.5 Turboと同水準に設定されている。
Grok 3.5の投入タイミングは、ここ数週間の推論モデル競争の延長線上にある。OpenAIがo4、Googleが Gemini 2.5 Ultraをそれぞれ公開し、ベンチマーク上位はほぼ横並びとなっている。差別化の焦点は「精度」から「情報の鮮度」と「エージェント組み込み可否」へ移行しており、xAIはその文脈でLive Groundingを引っ提げて参入した形だ。
xAIはGrok 3において、X(旧Twitter)のリアルタイムデータへのアクセスを強みとして押し出してきたが、Grok 3.5ではそれをモデル内部アーキテクチャに組み込むことで、X限定ではなく汎用Webへと検索範囲を拡張している。
従来のRAG(検索拡張生成)やツール呼び出し型エージェントは、検索→取得→入力→推論という逐次構造をとる。Live Groundingは推論の途中で検索を挿入するため、「仮説を立てながら検証する」人間的なリサーチプロセスに近い動き方をする。具体的には、競合調査・文献調査・ファクトチェックを伴う分析レポート生成タスクで工程数が減ると見られる。
512,000トークンのコンテキストは、約400ページ相当の文書を一括処理できる容量だ。決算資料の多期間比較、契約書レビュー、長編コードベースの横断解析など、「長いものを全部渡して聞く」用途での実用域に入る。ただし、長文コンテキストで推論精度が維持されるかは独立した検証が必要で、公式発表数値のみでの判断は早計だ。
$8/$24(入力/出力、100万トークン)は、Claude Opus 4.6の$15/$75、GPT-4.5 Turboの$10/$30と比較すると入力コストで有利な設定だ。コスト最適化を優先するエンタープライズ調達では選択肢に入ってくる水準とみられる。
現時点でのAPI仕様はOpenAI互換エンドポイントを提供しており、LangChain・LlamaIndex・Claude Agent SDKなど主要フレームワークからのスワップインが想定される。Live Grounding機能自体はAPIコール時のパラメータ(live_grounding: true)で制御可能なため、エージェントパイプライン設計者が既存ワークフローに組み込みやすい構造になっている。
xAIはGrok 3.5と同時に、エンタープライズ向け「Grok for Teams」プランの拡張も発表した。シートあたり月額$40で優先APIアクセスと監査ログが付帯する。企業利用のガバナンス要件を意識した動きで、これまでの「個人向け先行」路線からの転換とも読める。
今回の発表で最も注目するのは、Live Groundingという機能単体よりも、「推論と検索の境界をなくす」という設計思想の方だ。モデルが自律的に「今ここで検索すべき」と判断する仕組みは、エージェント設計者にとって一つのループが省けるという意味で実用上の価値がある。
ただし、検索タイミングの制御がブラックボックスである点はリスクとして残る。どのタイミングで何を検索したかのトレーサビリティが担保されなければ、監査が必要な業務(法務・コンプライアンス・財務レポーティング)への展開は慎重にならざるを得ない。xAIが「検索ログのAPI提供」に踏み込むかどうかが、エンタープライズ採用の分岐点になるとみられる。
競合各社のモデルが推論精度の数字で横並びになっている今、差別化の戦場は「情報の鮮度」と「エージェント組み込みコスト」に移っている。その観点では、Grok 3.5のポジショニングは明確だ。ただし、Live Groundingが実タスクで主張通りの精度改善をもたらすかは、今後2〜4週間で出てくる独立した再現実験を待ちたい。
xAI「Grok 3.5」の本質は、推論ループ内へのリアルタイム検索統合という構造変化にある。ベンチマーク数値の競争から一歩引いて、「情報鮮度」を設計に組み込んだ点でリサーチ・調査系業務への影響は直接的だ。次の焦点は、Live Grounding機能のトレーサビリティ仕様の公開と、独立機関による再現評価の結果になる。エンタープライズ調達担当者は、今週中に出るであろう第三者ベンチマークレポートを待ってから判断するのが妥当だろう。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(AIニュース)が執筆しています。