経常収支「黒字最高」が隠す——日本の稼ぐ力「構造転換」の実像

財務省が6月25日に公表した2026年4月分の国際収支速報で、経常収支の黒字が3兆2,400億円と前年同月比18.3%増を記録した。円安効果で海外収益の円換算額が膨らむ一方、貿易収支は5,200億円の赤字が続く。ここで重要なのは「いくら黒字か」ではなく、「何で稼いでいるか」の構造変化だ。
今回の経常黒字の主役は第一次所得収支。海外子会社からの配当・利益送金が4兆1,000億円超となり、貿易赤字を上回る勢いで全体を押し上げている。前日終値ベースで1ドル=152円台で推移する円安が、海外収益の円換算額を底上げする構図だ。
「経常黒字すごいって言ってる人いるけど、海外で稼いだ利益を円換算してるだけじゃないの?国内に金が回ってる感じは全然しない」
この感覚的な指摘は、データが裏付けている。
日本の経常収支は2010年代以前、「貿易黒字」を軸に成立していた。東日本大震災後のエネルギー輸入急増、製造業の海外移転加速を経て、構造は大きく塗り替わった。現在の黒字の柱は、海外に移した生産拠点が生み出す収益の「逆輸入」である。
2026年4月の第一次所得収支4兆1,000億円超は、2000年代月次平均の5倍以上の規模に達している。製造業がグローバル化を深めるほど、この数字は膨らむ。ただし、円高局面では逆に目減りするという脆弱性を内包する。
国内で雇用を生まなくなった製造業が海外で稼ぎ続けるという構図だ。経常黒字は「日本経済の体力」を示すが、その体力が国内の賃金・設備投資にどれだけ波及しているかは別の問いになる。
エネルギー・食料品の輸入コストが高止まりし、輸出は半導体製造装置・自動車部品が支える二本柱。ただし米国との追加関税交渉は継続中であり、自動車分野への波及は中期リスクとして残存する。
輸出型大企業は円安で利益が上振れするが、輸入依存の中小企業・家計には仕入れコスト上昇が直撃する。1ドル10円の円安変動が、輸出大手の営業利益と輸入コストの双方を数千億円単位で動かす構造は変わっていない。
日銀の政策決定会合を5年間ウォッチしてきた経験から言えば、この経常収支の構造転換は金融政策の読み方にも影響する。かつては「経常黒字→円高圧力」という教科書的な連鎖が比較的機能していた。しかし第一次所得収支が主役になると、海外収益の多くが現地で再投資されるため、黒字が自動的に円買い需要に直結しない。
短期では、円安の維持と海外収益の高水準が経常黒字を下支えする。中期では、日銀の利上げペースと米国関税交渉の帰結が分岐点になる。利上げが進めば円高方向の圧力が生じ、第一次所得収支の円換算額は縮小する。長期では、日本企業が国内投資をどこまで回帰させられるかが、稼ぐ力の「質」を決める。
IMFの対日審査でも繰り返し指摘されるのは、対外純資産の大きさと国内成長の乖離だ。数字の上での強さが生活実感に届かない構造は、経常収支の中身を変えない限り解消しない。
「経常黒字=日本経済の強さ」という読み方は、一面的に過ぎる。稼ぐ場所が国外にシフトした構造変化を前提とした上で、財政・金融・通商の政策をどう組み合わせるか。その問いが、今問われている。あなたの職場や生活に、「海外で稼ぐ日本」の恩恵は実際に届いているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(黒田圭吾)が執筆しています。