2026年夏、「古着ファースト」世代が動かすファッション消費の新しい地図

「何か欲しいな」と思ったとき、まずフリマアプリを開く——そんな習慣が、いつの間にか20代の間で"当たり前"になっていた。新品ではなく古着をファーストチョイスにする感覚。それを動かしているのは節約意識だけでは説明がつかない。2026年の夏、ファッション消費に起きている静かな地殻変動がある。
国内のリユース・フリマアプリ市場は2025年度に1兆2,000億円を突破したとされ、2021年比で約1.7倍の成長を遂げた。メルカリ単体の月間利用者数は2,300万人超(2025年12月時点)で、もはや「売る場所」ではなく「買う場所」として完全に定着している。
X(旧Twitter)でも、このムードは可視化されている。
最近ほぼ古着しか買ってない。新品で欲しいと思うものがそもそも減った気がする。質感とかサイズ感がいい感じのって古着にしかないんだよね
(@匿名ユーザー、7月投稿、いいね数4,200超)
「節約のために古着を買う」から、「好みに合うものが古着にしかない」へ。消費の動機がシフトしている、が、ちょっと面白い。
この変化を理解するには、2020年代前半からのいくつかの流れを重ねて見る必要がある。
第一に、フリマアプリの「購買体験」が根本的に変わった。検索精度の向上、ブランド公式ショップの出店、配送の即日化——これらが「古着を買う」ハードルを一気に下げた。もはや古着屋を探し歩く行動とは別の、快適なネット購買として成立している。
第二に、ファストファッションへの「飽き」と「疑問」が重なった。年間膨大な量を製造・廃棄するブランドへの批判意識が、20代の感覚にじわじわと染みこんでいる。「安いから何枚も買える」より「ちゃんと好きなものを一枚」という軸が静かに育ってきた。
第三に、SNSでの「自分スタイルの提示」が変わった。2020年代初頭のような「ブランド名で語るコーデ」より、「どこで見つけたかわからないレア感」が評価される空気がある。古着の一点物性が、むしろコンテンツとして強い。
20代の古着購入者に話を聞くと、「お金がないから」という答えはむしろ少ない。重要なのは「他と被りたくない」「サステナブルであること」「一点物の面白さ」——この三軸が揃っていること。フリマアプリ関連調査(2025年)では、20代購入者の約67%が「古着を選ぶ理由」としてスタイル的価値を上位に挙げたという。古着好きな人なら、これは多分刺さる数字だと思う。
「安さ」の代名詞だった古着の価格帯が変わってきている。状態のいいヴィンテージ品や希少モデルのスニーカーは定価の2〜5倍で取引されることも珍しくない。2026年上半期、フリマアプリ内の平均取引価格は3,400円台まで上昇しており、5年前比で約30%高い水準だ。「安く手に入れる場所」から「価値を見極める場所」へと変わっている。
都市部の古着店では、単に服を置くだけでなく「誰が、いつ、どんな文脈で着ていたか」を語るストーリー展示が増えている。渋谷・下北沢では2025年以降、"キュレーター型"と呼ばれる選書的な品揃えの古着店が10店舗以上オープンした。服を売るのではなく、「感性を買う場所」として機能している。
購入時点から「これはいつか売れる」「次の人のために状態を保つ」という感覚がある。服を消費するのではなく、一時的に預かるような感覚。この「循環前提の消費」は、これまでのリユース観とは異なる。使い捨て消費の裏返しではなく、消費の文法が根本から変わりはじめているように見える。
ファッション誌の現場にいた頃、「次のシーズンの新作」を発信することが仕事だった。何が入荷されるか、何が注目されるか——ずっと「新しさ」を追いかけていた。でも今、街を歩いていて面白いと感じるのは、古着屋の前に並ぶ若い人たちのほうだったりする。
彼らの目つきが、ちょっと違う。「何かいいものないかな」という能動的な探索眼がある。新品を選ぶときと、古着を探すときでは、買う側の「参加感」が根本的に違う気がする。
自分でいえば、レコードを探す感覚に近い。出会いを探しにいく消費。それが今、服でも起きている。フリマ市場の1兆円超という数字より、私が気になるのは「好みに合うものが古着にしかない」という感覚の広がりのほうだ。欲しいものの解像度が上がった、ということでもある。「なんとなくこういう感じ」ではなく、「これじゃないとダメ」という基準を持ちはじめた消費者が増えているということ。
その欲求に応えられるのが、今のところ新品市場よりも古着市場のほうが多い——というのは、ファッション産業全体が考えるべき構造的なヒントを含んでいると思う。
「古着ファースト」は節約でも一時的な流行でもなく、消費の基準そのものが変わったことのサインかもしれない。スタイルとして古着を選ぶ人が増えるほど、新品市場は「古着より選ばれる理由」を問い直されることになる。あなたの次の一枚は、どこで探すだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。