50代で動き出した絵本の夢──AI と描いた 12 ページ
沢井さんは 52 歳、都内で事務職をしながら、大学生になった娘との二人暮らしを送っている。20 代のころ、絵本作家を志していた。美大を出て、小さな出版社でイラストレーターのアシスタントをしながら、自分の作品を持ち込んでいた時期もあった。 けれど結婚、出産、離婚を経て、気づけば「絵本を描く時間」は生活の中から消えていた。娘を育てるための仕事、家事、PTAの役員、習い事の送り迎え。スケッチブックは押し...
沢井さんは 52 歳、都内で事務職をしながら、大学生になった娘との二人暮らしを送っている。20 代のころ、絵本作家を志していた。美大を出て、小さな出版社でイラストレーターのアシスタントをしながら、自分の作品を持ち込んでいた時期もあった。 けれど結婚、出産、離婚を経て、気づけば「絵本を描く時間」は生活の中から消えていた。娘を育てるための仕事、家事、PTAの役員、習い事の送り迎え。スケッチブックは押し...
15年止まっていた「いつか」 山田(42歳・メーカー営業)がスケッチブックを最後に開いたのは、大学受験の直前だった。美大志望だったが、家計と将来への不安から一般大学へ進路変更。就職し、結婚し、娘が生まれた。 毎晩、寝る前に市販の絵本を読み聞かせる。娘は目を輝かせる。「自分で描いた絵本を読んであげたい」——その想いは15年間、胸の奥に沈んだままだった。 絵を描く時間はない。物語を書く技術もない。印刷...
子育てで遠ざかった、絵と物語の世界 沢井さん(38歳)は、2人の小学生を育てる母親だ。平日は事務パートとして働き、週末は子どもたちのサッカーと習い事の送迎に追われる。ごく普通の、忙しい日常。 けれど10年前、彼女には別の顔があった。グラフィックデザイナーとして働きながら、絵本作家を目指していた。週末ごとにスケッチブックを広げ、動物たちが冒険する物語を描いていた。出版社に持ち込んだこともある。「いつ...
小学生の頃、佐伯は図書室で絵本を読むのが好きだった。ページをめくるたびに広がる色と物語に夢中になり、「いつか自分も作りたい」と何度も思った。だが中学、高校と進むうちに絵を描く時間は減り、大学卒業後は営業の仕事に就いた。結婚して子どもが生まれ、気づけば44歳。絵本の夢は、どこか遠い記憶の引き出しに仕舞い込まれていた。 転機は2026年2月、会社の研修で生成AIの話題が出たときだった。「絵が描けなくて...

深夜0時23分、佐伯はノートパソコンの画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。目の前には12ページ分の絵本データ。ストーリー、イラスト、レイアウト――すべて揃っている。 「本当に、できたんだ」 39歳、2児の母。元グラフィックデザイナー。7年前に長女を産んでから、創作らしい創作をしていなかった佐伯にとって、この瞬間は静かな衝撃だった。 消えていった「いつか描きたい」 佐伯が絵本作家を目指していた...