
この記事でわかること
2026年9月20日、中国のAIスタートアップ StepFun(階躍星辰)が新しいAIモデル「Step 5 Preview」を発表しました。
StepFunは2023年4月に上海で設立された、元Microsoft社員が創業したAI企業です。中国では「AIタイガー」と呼ばれる有力スタートアップの1社として知られています。
Step 5 Previewは、合計600億パラメータ(600B)を持つ大規模AIです。ただし、スパースMoE(後述)という技術を使い、実際に動くのは27億パラメータ(27B)だけです。つまり、小さなAIのスピードで大きなAIの賢さを実現しています。
このAIは100万トークン(日本語で約75万文字)の長い文章を一度に理解できます。また、テキストだけでなく画像や動画も入力として受け付けます。
Step 5 Previewの価格は、100万トークンあたり入力1ドル、出力2.7ドルです。
これがどれだけ安いか、OpenAIのGPT-4oと比べてみましょう。GPT-4oは入力が5ドルです。つまり、Step 5 Previewは入力が5分の1の価格です。
Anthropicの Claude 3.7 Sonnet は3ドルなので、それと比べても3分の1です。
性能の指標である「Artificial Analysis Intelligence Index」では、Step 5 Previewは44点を記録しています。これは平均以上の推論能力を示す数値です。同じ44点付近のAIの中では、Step 5 Previewが最も安価です。
つまり、「同じくらい賢いAIの中で、圧倒的に安い」というのがStep 5 Previewの特徴です。
Step 5 Previewは「スパースMoE」という技術を使っています。MoEは「Mixture of Experts(専門家の混合)」の略です。
たとえば、あなたが病気になったとき、内科・外科・皮膚科すべての医者に同時に診てもらう必要はありません。症状に合わせて1人の専門医に診てもらえば十分です。
MoEも同じ考え方です。600億パラメータ全体を常に動かすのではなく、質問の内容に応じて最適な27億パラメータだけを選んで使います。これが「スパース(疎)」の意味です。
Step 5 Previewは92層という深い構造を持っています。これは、幅を広げるのではなく深さを追求した設計です。また、on-policy強化学習という訓練方法で、実際の使用場面に近い状態で学習しています。
さらに、FP8(8ビット浮動小数点)やKVキャッシュのオフロードといった技術で、メモリ使用量を削減しています。つまり、少ない計算資源で動くように最適化されているのです。
StepFunは、Step 5 Previewを「エージェント作業向けの基盤モデル」と位置づけています。
エージェント作業とは、AIが人間の指示を受けて複数のステップを自律的にこなす仕事のことです。具体的には以下のような用途が想定されています。
これらはすべて、長い文脈を理解し、複数のツールを使い分け、長時間の作業を続ける能力が必要です。Step 5 Previewの100万トークンという長い文脈長は、まさにこうした用途に最適です。
Step 5 Previewは10月15日に「オープンウェイト」として公開される予定です。
オープンウェイトとは、AIの「重み」と呼ばれる内部パラメータを誰でもダウンロードできる形で公開することです。これにより、企業や開発者は以下のことが可能になります。
特に日本企業にとって重要なのは、データの機密性です。金融機関や医療機関など、顧客情報を扱う業界では、データを外部のクラウドに送ることが難しい場合があります。
オープンウェイトのAIなら、自社のサーバー内だけでAIを動かせます。つまり、機密情報を守りながら最新のAI技術を使えるのです。
Step 5 Previewの登場は、日本企業にとって大きなチャンスです。
まず、APIの価格が安いため、AIを使ったサービス開発のハードルが下がります。たとえば、カスタマーサポートの自動化や、社内文書の検索システムなど、これまでコストが理由で諦めていたプロジェクトが現実的になります。
次に、オープンウェイトの公開により、自社専用のAIを構築できます。日本語の専門用語が多い業界(法律、医療、製造業など)では、汎用AIよりも自社でカスタマイズしたAIの方が精度が高くなります。
さらに、中国のAI企業が低価格で高性能なモデルを次々と発表する流れは、今後も続くと予想されます。DeepSeek V4.1やGLM-5.3に続き、Step 5 Previewも同じ戦略です。
これは、米国のOpenAIやAnthropicに依存しない選択肢が増えることを意味します。日本企業は、複数のAIプロバイダーを使い分けることで、コストを最適化し、リスクを分散できるようになります。
中国のAI企業による低価格攻勢は、日本のビジネスにとって追い風です。今後、Step 5 Previewのような選択肢が増えることで、AI活用の幅が大きく広がるでしょう。
この記事は AI Friends からのクロスポストです。
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