日銀、2026年秋の追加利上げ観測が再浮上——円相場と金利市場が映す「次の一手」

日銀の追加利上げを巡る観測が、2026年7月に入り再び市場の中心テーマとなってきた。コアCPI(生鮮食品除く)が2%台を維持し続け、春闘の平均賃上げ率が5.1%(連合最終集計)に達したことで、政策修正の「論拠」は着実に積み上がっている。ここで重要なのは利上げ「するかどうか」ではなく、「いつ、どの程度」の問いに市場がどう価格付けするかの方だ。
OIS(翌日物金利スワップ)市場が示す年内追加利上げ確率は、6月末時点で約62%まで上昇した(Bloomberg集計)。前月比で約18ポイントの急伸だ。引き金になったのは6月27日公表の5月分全国CPI。コアCPIは前年同月比+2.4%と、日銀が想定する「中長期的な物価安定目標」の水準を13カ月連続で上回った。
X(旧Twitter)上でも反応は素早かった。
「春闘5%超えてコアCPI2.4%ならもう利上げしない理由が見当たらない。植田総裁が次の会見で何を言うかに全部かかってる」
こうした市場参加者の声が、月曜朝から金融クラスターで拡散していた。
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、同年7月に0.25%、2025年1月に0.5%へと段階的に利上げを実施してきた。現在の政策金利は0.75%(2025年10月改定後の水準)。
ここで目を向けるべきは「実質金利」の水準だ。名目0.75%に対し、インフレ率が2.4%であれば実質金利はマイナス1.65%圏にある。欧米の正常化局面と比較しても、日銀の政策姿勢は依然として緩和的であることが数字から見て取れる。
IMFは4月の対日審査報告書で「段階的かつ慎重な政策正常化」を支持しつつ、「実質賃金の持続的なプラス転化を確認することが前提」と条件を付している。6月の毎月勤労統計では実質賃金が前年比+0.8%と、3カ月連続のプラスを記録した。この数字が日銀の「確信」にどこまで寄与するか、次回7月決定会合(30〜31日)が試金石となる。
前日終値(7月2日)でドル円は144円台後半。年初来の円安水準(151円台)からは回復しているが、「利上げ観測だけで円高が進む構造」は崩れつつある。米FOMCが9月以降の利下げを示唆する一方、日米金利差は依然6ポイント超。構造的な円安圧力は短期では弱まりにくい。
国内10年国債利回りは1.6%台に乗せ、2011年以来の高水準圏にある。日銀が国債買い入れ減額(テーパリング)を継続する中、需給面での上昇圧力も加わる。1.8〜2.0%を「次の壁」と見る市場関係者は増えており、住宅ローン・設備投資への波及が焦点になる。
主要輸出企業の2026年度業績予想の為替前提は145〜148円が中心帯。現在の144円台後半は想定内だが、もし130円台に突入すれば業績下方修正のリスクが一気に高まる。決算会見では各社CFOの「為替感応度」の言及が増えており、今後のシナリオ分析の入力値として押さえておきたい。
連合の春闘妥結率5.1%が秋以降の消費に波及するかが中期の焦点だ。内閣府の家計調査では4〜5月の実質消費支出が横ばい圏にとどまる。賃上げが貯蓄に回れば、日銀が期待する「賃金と物価の好循環」のエビデンスは薄れる。
日銀番記者として5年間、決定会合の声明文の行間を読んできた経験から言うと、今の植田日銀は「急がないが、後戻りもしない」という姿勢を貫いている。声明文に登場する「2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現」という表現は、2023年以降、微妙に修飾語が変化してきた。今年4月の声明では「見通しに沿って推移している」という表現が前四半期比で強まった。こういった行間の変化こそ、会見での記者質問の組み立てに直結する。
為替を巡る判断も単純ではない。過去の利上げ局面、たとえばバブル崩壊前夜の1989〜90年、あるいはゼロ金利解除の2000年と2006年を振り返ると、いずれも「なぜそのタイミングで動いたのか」について後から批判が出た。歴史的アナロジーで言えば、今回は「早すぎた正常化」より「遅すぎた正常化」のリスクを意識するフェーズに入った可能性が高い。
短期では円安と輸出企業業績への配慮から7月の動きは慎重になろう。中期(年内)では秋口の追加利上げが基本シナリオとして織り込まれていくと見る。長期では日米の政策金利格差が3ポイント以内に縮まるまでは、構造的な円安バイアスが続く可能性が高い。
コアCPIの高止まり、実質賃金のプラス転化、OIS市場の利上げ織り込み拡大——材料は揃いつつある。ただし日銀の政策判断は「データ依存」を繰り返すだけに、7月31日の決定会合とその後の植田総裁会見が当面の最大の注目点だ。あなたの家計・職場・ポートフォリオにとって、「金利が上がる世界」はどのような意味を持つだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(黒田圭吾)が執筆しています。