選択的夫婦別姓、通常国会の会期末に正念場——30年棚上げの構造と世論72%の乖離


まず事実から確認しておく。選択的夫婦別姓をめぐる立法議論は、1996年1月の法制審議会答申から数えて30年が経過した現在もなお決着していない。2026年6月、通常国会の会期末が迫る中、野党共同提出の民法改正案が衆議院法務委員会で審議入りし、与野党の攻防が本格化している。
2026年通常国会では、野党各党が共同提出した民法改正案が審議入りした。婚姻後も希望する夫婦が各自の旧姓を戸籍名として維持できる「選択制」を導入する内容だ。与党の一部は「慎重審議」を求め、5月末時点での実質的な委員会審議時間はわずか6時間にとどまっている。
X(旧Twitter)では「別姓賛成」「家族の絆を守れ」の両ハッシュタグが並走し、トレンド入りが続いた。あるユーザーはこう投稿した。
婚姻のたびに資格証・クレカ・パスポートをすべて変え直す。これを「ライフイベント」と呼ぶのは制度の欠陥を個人に押しつけているだけだと思う。(会社員・30代女性)
内閣府の2025年世論調査では、制度導入に「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した割合が計72.3%に達した。2001年の同調査では42.1%であり、20ポイント以上の増加は数字として明確だ。
民法750条は婚姻時に夫婦いずれかの氏を選ぶことを義務づけており、法務省の2024年統計では約95%のケースで女性が改姓している。旧姓の通称使用を認める企業は全国で約68%に拡大したが、通称に法的効力はなく、銀行口座・不動産登記・パスポート併記などで手続きが煩雑になる場面は残る。
経済界からの圧力も増している。経団連は2024年に「早期立法化」を求める提言を出し、外資系企業との取引や海外赴任時の支障を具体的に列挙した。立法を促す素地は整いつつあるが、国会の動きは追いついていない。
立場Aの推進派は「現行制度は事実上の強制改姓であり、個人の尊厳と職業上のアイデンティティに関わる問題だ」と主張する。弁護士会・女性団体・経済団体がこの立場をとり、特に女性の研究・医療・法曹資格への実害を根拠に挙げる。
立場Bの慎重派は「夫婦・親子の同姓は家族の一体感を体現し、子の氏をめぐる紛争を防ぐ機能を持つ」と反論する。保守系議員・宗教系団体・一部の家族法研究者がこの立場に立ち、「親が別姓の場合、子の姓をどう決めるか」という問いを最大の論点に据える。
1996年の答申以降、政権が法案提出を見送り続けた背景は、これは制度論の対立というより、与党内の族議員政治と選挙区事情が絡み合った「政治的先送り」の構造問題に近い。同性婚・夫婦間レイプの刑事罰化など家族法改正全般に見られる共通パターンだ。
旧姓通称を認める企業が68%に達しても、金融庁・法務省・外務省をまたぐ制度を横断的に変えなければ根本解決にならない。この縦割り構造が立法の遅れをさらに複雑にしており、企業努力だけで埋められる空白には限界がある。
地方支局で市町村合併の議事録を2年間読み漁った経験から言うと、「決まらない」状態が長く続く案件には必ず、それを支える利害の構造がある。選択的夫婦別姓もその典型で、世論が動いても国会が動かない背景には、選挙区ごとの支持基盤への配慮という現実がある。
2026年の通常国会は7月上旬に会期末を迎える。6時間の審議で採決に至る可能性は現状では低く、今国会での成立は困難とみる向きが多い。ただ72%という数字は、10年前には想像しにくかった水準だ。
ここで問われているのは、婚姻届の様式よりも深いところにある問題だ。誰が、どのような手続きで「家族の法的な形」を定めるのか、という民主主義の意思決定プロセスそのものを、この論争は照らし出している。
世論の72%と委員会審議6時間という数字の落差は、現在の立法プロセスが特定の争点でどれほど硬直しやすいかを端的に示している。会期末を前に採決が行われるかどうかに注目が集まるが、その先には「なぜ30年かかったのか」という構造への問いが残る。あなたは、この落差をどう読むだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。