空き家1000万戸時代が迫る——改正空家法3年目の現実と積み残し

まず事実から確認しておく。2023年の住宅・土地統計調査で全国の空き家数は899万戸と過去最多を更新し、2026年現在は推計で1,000万戸に迫る水準にある。住宅総数の約14%が「使われない家」になった計算だ。2023年12月に施行された改正空家法から約3年が経ったいま、制度の整備と現場の実態の間には依然として大きな溝が残っている。
国土交通省が2026年8月に公表した「空き家対策の取り組み状況」によれば、「特定空き家」として自治体に認定された件数は全国で約8万2,000件(2025年度末時点)。改正前の2022年度比で約1.4倍に増えた。一方、実際に除却(取り壊し)が完了した件数は同期間に約2万1,000件にとどまり、認定件数の4分の1程度だ。
X(旧Twitter)では、こんな声も広がっている。
実家が空き家になって2年。市役所に相談したら「特定空き家の認定には現地調査が必要で、順番待ちが6カ月」と言われた。制度はあっても人がいない。(@匿名ユーザー、約4,200いいね)
「制度はできた。しかし人と予算が追いついていない」——この構図は、地方行政を長く取材してきた経験からすれば、決して珍しいものではない。
改正空家法が成立したのは2023年6月。従来の「特定空き家」(倒壊の危険がある物件など)に加え、新たに「管理不全空き家」という類型を設けた。固定資産税の優遇措置を停止できるようにし、所有者に管理改善を促す仕組みだ。
背景には、空き家が引き起こす社会問題の深刻化がある。2023年の調査では、管理状態が悪い物件が全体の約23%、約200万戸に達した。火災リスク、景観の悪化、不法投棄の温床——近隣住民への影響は無視できない水準になっている。
これは「不動産の問題」というより、人口減少社会において縮退するインフラをどう管理するかという、より構造的な問いに近い。
空き家対策の最大の壁の一つが所有者の特定だ。法務省の調査では、登記情報をたどっても約20%のケースで現住所の確認が困難という結果が出ている。高齢者が亡くなった後、相続登記が未了のまま放置されるケースが多い。2024年4月から相続登記が義務化されたが、既存の未登記物件の解消には長期間を要するとみられる。
空き家対策の実務を担うのは市区町村だ。しかし、担当職員を専任で配置できる自治体は全体の30%以下という調査結果もある(全国市長会、2025年)。人口が少ない自治体ほど空き家率が高く、かつ職員数も少ない——問題の大きさと対応能力が反比例する構造になっている。
空き家の扱いは大きく「除却」と「活用」に分かれる。国は空き家バンクの整備や移住促進と組み合わせた活用策を推進しているが、地方圏の物件はニーズが限定的で、活用が進む事例は都市近郊に偏りやすい。過疎地域では除却費用の捻出が課題となり、1件あたり平均150万〜200万円とされる費用は、低所得の高齢所有者には重い負担だ。
改正法の目玉である「管理不全空き家」の認定は、固定資産税優遇の廃止という強制力をともなう。だが、2025年度末時点での認定件数は全国で約3,400件にとどまる。担当者へのヒアリングでは「近隣との関係もあり、いきなり認定には踏み切りにくい」という言葉が繰り返された。制度の強度と運用の現実には、明らかな乖離がある。
地方支局時代、人口減少地域の合併議論を2年にわたって追ったことがある。議事録を全件読み込んでいると、繰り返し出てくる言葉があった。「財源は国で持ってほしい。でも権限は渡したくない」——この矛盾した要求こそが、中央と地方の関係を映す鏡だと思った。
空き家問題も、構造は同じだ。法律は国がつくる。執行の責任は自治体に落ちてくる。財政移転の仕組みが制度の実効性に追いつかない限り、認定件数だけが積み上がり、現場は動かない。
立場Aとして、自治体側の言い分は「国の制度設計が現場の実態を知らない」に集約される。立場Bとして、国土交通省は「補助金メニューを拡充し、後押しはしている」と応じる。どちらも一面では正しい。問題は、その間で宙に浮く空き家を、誰がいつどう処理するかの答えが出ていないことだ。
これは「空き家をどうするか」というより、「縮む社会のコストを誰が負うか」という問いに近い。制度の精緻化と並行して、費用負担の枠組みを問い直す議論が必要な時期に来ている。
改正空家法は確かに前進だった。しかし3年目の現実を見れば、制度の外側で問題は積み上がり続けている。1,000万戸時代が現実のものとなる前に、所有者対策・自治体支援・費用負担の見直しをセットで議論できるかどうか。次の臨時国会での審議が注目される。あなたの街に、使われなくなった家はいくつあるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。