地方の医師不足が加速——医療アクセス格差が示す構造問題

まず事実から確認しておく。厚生労働省の「医師偏在指数」では、全国の約140か所が「医師少数区域」に分類され、都市部との格差は縮まるどころか緩やかに広がり続けている。少子化と地方の人口減少が連鎖し、医療の空白地帯が静かに拡大している。これは制度の失敗ではなく、構造そのものの問題に近い。
厚生労働省の2025年度調査によると、人口10万人あたりの医師数は東京都が約340人であるのに対し、医師少数区域に該当する地方では80人を下回る地域も存在する。この4倍以上の格差は、2020年時点からほぼ改善されていない。
産婦人科に限ると状況はさらに深刻だ。2026年現在、分娩を取り扱う医療機関が1つもない「お産難民地域」は全国で50市町村を超えているとされる(医療経済研究機構、2026年3月時点の推計)。
X(旧Twitter)上でも、当事者の声が静かに広がっている。
近くの産院が閉院して、次に近い病院まで車で1時間半。妊娠中にこれは本当に怖い。地方に住むということが、こういう意味を持ってくるとは思っていなかった(長野県在住・30代女性、匿名)
この問題は「医師が地方を選ばない」という個人の選択の話ではなく、医療提供体制そのものの構造問題に近い。
医師偏在の構造的な要因は複数ある。
第一に、大都市圏の病院への研修集中という制度的な流れがある。2004年に導入された新臨床研修制度は研修病院の選択を自由化したが、これが皮肉にも若手医師の都市集中を加速させたと指摘する専門家は多い。
第二に、地方医療機関の経営問題がある。過疎地では患者数が少なく、診療報酬だけでは経営が成り立たないケースが増えている。2024年の診療報酬改定で地域加算の見直しが行われたが、抜本的な解決には至っていない。
第三は、少子化との連鎖だ。「医師が来ない→子育て環境が整わない→若い世代が出ていく→患者がさらに減る」という悪循環が、特に人口1万人未満の小規模自治体で顕著になっている。
厚生労働省は2020年から、地方での一定期間の勤務を条件に専門医資格取得を認める「地域枠」制度の強化を進めてきた。しかし2025年度の調査では、地域枠で入学した医師の約15%が義務年限終了後に都市部へ移動しているという実態も明らかになっている。制度の設計と現実のギャップがここに表れている。
一部の自治体は奨学金返済支援(月額最大10万円補助)や官舎の無償提供、子どもの教育環境整備を「セット」で提示する医師招聘策を展開している。しかし財政力の乏しい町村ほど提示できる条件が弱く、「大都市近郊には医師が来るが遠隔地には来ない」という二極化が生じている。
遠隔地の医療アクセス補完策として注目されるオンライン診療の利用件数は、2025年度で約1,200万件(厚生労働省推計)と2020年比で約5倍に拡大した。ただし外科的処置や分娩には対応できない。「初期相談は画面越しでできても、いざというときに頼れる医師が近くにいない」という本質的な課題は残ったままだ。
遊軍記者として地方を回った経験から言うと、医師不足の問題は「医療の問題」というより「地域の存続コスト」の問題に近い。
ある過疎地の首長がこう言っていた。「医師を一人確保するコストは、この町の年間福祉予算の3分の1に相当する。それでも来てくれなければ、病院を閉めるしかない」。これは一自治体の個人的な苦悩ではなく、中央・都道府県・市町村の3層で責任を押し付け合う構造そのものを映している。
立場Aとして、医師の自由な勤務先選択を尊重する立場は「強制配置は憲法上の職業選択の自由に抵触する恐れがある」と主張する。確かに強制力を伴った地域配置には法的な慎重さが必要だ。
立場Bとして、医師資格が国家試験と公的な医学教育によって担保されている以上、一定の公的義務を課すことが正当だという議論もある。ドイツやカナダでは地域枠に法的拘束力を持たせた事例もある。
著者の見立てとしては、制度設計の精緻化だけでは解決しない。地域全体の「住みやすさ」のベースラインを上げない限り、医師だけを呼び込む施策は持続しないだろう。医療政策として語られているこの問題が、実は地方行政全体の設計問題であることを、もう少し正面から議論すべき時期に来ている。
医師不足は、地方に住む人々の「生きる環境」に直結する問題だ。2026年、政府の偏在対策はなお途上にある。パッチワーク的な対応ではなく、地域医療の持続可能な設計をどう描くか。2027年度に予定される医師偏在指数の見直しが、その分岐点になる。あなたの町に、医師は何人いるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。