ヤングケアラー20万人時代——支援法2年、制度と現場のズレはなぜ埋まらないか

まず事実から確認しておく。文部科学省の最新調査(2026年3月公表)によれば、家族のケアを日常的に担う「ヤングケアラー」は中学生の約6.5%、高校生の約5.9%に上り、全国推計で20万人を超える。2024年4月に施行されたケアラー支援法は「早期発見・支援」を掲げたが、制度の整備と現場の実態の間には、いまだ大きな溝がある。
ヤングケアラーとは、18歳未満でありながら、病気や障害を抱える家族の介護・家事・きょうだいの世話などを担う子どもを指す。2021年の初の全国調査で存在が広く認知され、2024年4月、国はケアラー支援法を施行した。法律では、市区町村に「ケアラー支援計画の策定努力義務」を課し、相談窓口の整備や学校との連携を求めている。
しかし施行から2年が経過した現在、X(旧Twitter)上では当事者や支援者からの声が相次いでいる。
「学校の先生に話したら『頑張ってるね』で終わった。支援につながったのは大学に入ってから。手遅れ感がある」(20代・元ヤングケアラー、匿名)
支援計画を策定済みの市区町村は、2026年4月時点で全体の約38%にとどまる。地方と都市部の格差も著しく、人口5万人未満の自治体では策定率が21%を下回るとのデータもある(厚生労働省調べ)。
ヤングケアラー問題が「見えにくい」のは、子ども自身が自らの状況をケアとして認識していないケースが多いからだ。前述の調査では、「自分はヤングケアラーだと思う」と回答した中学生はわずか2.3%。実態との大きな乖離がある。
加えて、家庭内の問題は学校・医療・福祉のどの窓口にも「専門外」と判断されやすく、制度の縦割りがそのまま支援の空白になる。これは過去に私が取材した災害対応の構造と重なる——国・都道府県・市町村の三層がそれぞれ動いても、当事者には届かない問題だ。
学校でヤングケアラーを把握している教員は全体の13%にとどまる(日本ケアラー連盟、2025年調査)。スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置は全国平均で学校100校あたり約0.8人。早期発見の担い手そのものが不足している。
ケアラー支援法は市区町村に相談窓口の設置を求めるが、窓口がどこかを知っている中高生は5%未満(内閣府調査)。周知の不徹底が、制度を絵に描いた餅にしている。
ヤングケアラーの家庭は低所得世帯の割合が高い。2026年の調査では、世帯年収300万円未満の家庭出身のヤングケアラーが全体の約42%を占める。ケアの問題は、教育格差・経済格差と切り離せない。
ヤングケアラー経験者の大学進学率は全国平均より約12ポイント低いとするデータがある(国立社会保障・人口問題研究所、2025年)。ケアが学習機会を奪い、そのまま貧困の連鎖に入るリスクは無視できない。
これは「子どもの問題」というより、「家族政策と社会保障の空白が子どもに転嫁されている」問題に近い——というのが率直な見立てだ。
地方支局時代に人口減少地域の合併議論を2年追いかけた経験から言えば、制度は作っても運用側の人手と予算が伴わなければ機能しない。ケアラー支援法も同様で、努力義務止まりでは自治体間格差が広がるだけだ。
立場 A(行政側)の論理は「まず法的根拠を作ることが先決で、運用は段階的に」というものだ。確かに法律がなければ予算も付かない、という論理は理解できる。一方、立場 B(当事者・支援団体)は「2年待っても現場は変わっていない、義務化と財源の明確化が必要」と訴える。
私の見立てとしては、早期発見の鍵を握るのはSSWと学校医の連携強化だ。医師には守秘義務があるが、児童福祉法の通告義務との関係を整理し、学校と医療がリアルタイムで情報共有できる仕組みを設ける必要がある。これは行政の縦割りを崩す話でもあり、一朝一夕には進まないが、議論を先送りにしていい理由にはならない。
20万人という数字は統計上の推計に過ぎず、今この瞬間も、ケアの重荷を一人で背負っている子どもがいる。ケアラー支援法が「絵に描いた餅」で終わるかどうかは、今後2〜3年の自治体の動きと財政投入にかかっている。あなたの住む自治体は、ケアラー支援計画を策定しているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。