選択的夫婦別姓、国会論戦が再燃——賛否の構造と立法の「壁」を読む

まず事実から確認しておく。選択的夫婦別姓の法制化をめぐる議論は、1996年の法制審議会答申から数えて30年が経過した今もなお、国会の場で決着を見ていない。2026年7月現在、超党派議員連盟が提出した民法改正案は今国会での採決を目指しているが、与党内の調整は依然として難航している。X(旧Twitter)では「#夫婦別姓」が週間トレンド上位に浮上し、市民の関心が改めて高まっている。
内閣府が2024年に実施した世論調査では、選択的夫婦別姓制度の導入に「賛成」または「どちらかといえば賛成」と回答した割合が約69.0%に達した。「反対」「どちらかといえば反対」は約25.0%にとどまる。
「就職してから20年、ずっと旧姓を職場で使い続けてきた。戸籍と職場の名前が違う不便さを、同僚には説明しきれない」(30代・会社員女性、匿名)
現在、上場企業の約62%が旧姓使用を社内制度として認めているが、銀行口座・パスポート・不動産登記などの公的手続きでは戸籍名のみが有効なケースが多く、実務上の摩擦は解消されていない。こうした「制度の隙間」への不満が、今回のトレンド再燃の背景にある。
日本が夫婦同姓を法律で義務づけているのは、国際社会の中で事実上「日本のみ」とされる。OECD加盟38カ国の中で婚姻後の同姓を法的に強制している国は他になく、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)からも繰り返し是正勧告が出されてきた経緯がある。
最高裁は2015年と2021年の2度にわたり、夫婦同姓を定める民法750条を「合憲」と判断した。ただし2021年判決では、15人の裁判官のうち4人が違憲の反対意見を付しており、司法内部でも評価は割れている。
1996年の法制審答申以降、関連法案は計4回国会に提出されたが、いずれも廃案か継続審議に終わった。これは制度論の対立というより、党内政治が絡む意思決定の問題に近い。
推進派は「姓名は個人のアイデンティティの核」との立場から、強制的な改姓は人格権の侵害にあたると主張する。加えて、婚姻後の改姓手続きや書類の差し替えにかかる社会的コストは年間6,000億円超(民間シンクタンク試算)とも言われ、経済合理性の観点からも改正を求める声は根強い。
慎重派の懸念は主に「家族の一体性」と「子どもの姓の帰属」に集中する。同一の姓が家族の絆を象徴するという価値観は、文化・宗教的背景とも絡み合い、単純な賛否に還元しにくい面がある。子がいずれの親の姓を名乗るかという二次的な問題も、制度設計を複雑にする要因として挙げられる。
自民党内では推進派と慎重派が長年にわたり拮抗し続けており、2025年の党内意向調査でも両者はほぼ五分五分とされた。党議拘束なしの自由投票に付すことへの抵抗感も根強く、リーダーシップを発揮しにくい構造が続いている。
地方支局時代を含め、政治取材を20年近く続けてきた経験から言うと、この問題が30年間解決しない本質的な理由は「賛否の数」ではなく「政治的コストの非対称性」にある。賛成票を投じて得られる支持と、反対した場合に失いかねない支持を比較したとき、現職議員が積極的に動くインセンティブが構造的に弱い。
地方議会レベルでは、すでに40を超える都道府県議会が選択的夫婦別姓の導入を求める意見書を可決している。国政と地方のこの乖離が30年続いているという事実は、中央政治の意思決定の遅さをそのまま映し出している。
国会会議録を引くと、1996年の法制審答申は今読んでも論点の整理が的確だ。これは○○の制度論争というより、「30年前に議論を終えた問題を誰が決断するか」という政治の問題に近い——それが私の見立てだ。
選択的夫婦別姓の議論は、制度論としてはとうに出口が見えている。世論の約7割が支持し、地方議会も動いた。残っているのは、その出口へ踏み出す政治的意思の有無だ。今国会がこの30年来の棚上げをどう動かすのか——あるいは動かさないのか。読者はこの問いを、どう受け止めるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。