外国人労働者「育成就労」元年——転籍制限が生む新たな縛りと失踪の構造

2024年、技能実習制度が廃止され「育成就労制度」が成立した。2026年現在、同制度は本格稼働から1年余りを経た。在留外国人数は2025年末時点で約350万人を超え、過去最多を更新し続けている。だが「制度が変わっても現場は変わらない」という声が、取材を通じて繰り返し聞こえてくる。
育成就労制度は、技能実習制度が長年抱えてきた「強制労働」「人権侵害」という批判を受け、2024年の入管法改正で創設された。就労者を正面から「労働者」と位置づけ、一定期間後の転籍(職場変更)を認めた点が大きな変更点とされた。
しかし法務省・厚生労働省の公開資料によれば、転籍が認められるのは「同一分野」かつ「1年以上の在籍」を原則とする制限が設けられている。
「制度が変わったと聞いて来日したのに、転籍したいと言ったら『1年待て』と言われた。その間は我慢するしかない」(育成就労で来日したベトナム人20代男性・匿名)
出入国在留管理庁のデータでは、2025年の失踪者数は約9,800人(前年比微減)と依然として高水準が続く。
技能実習制度は1993年に創設された。名目は「発展途上国への技術移転」だったが、実態は低賃金労働力の確保として機能し、国際的な批判を受け続けてきた歴史がある。
2022年の有識者会議報告書は「制度の廃止・抜本的見直し」を提言。これを受け2024年に育成就労制度が成立したが、転籍制限の緩和幅をめぐっては経済界と労働側の綱引きが激しく続いた。
農業・建設・介護・製造などの業種では、外国人労働者なしに現場が回らない状況が常態化している。2025年の国土交通省調査では、建設現場での外国人比率が都市部平均で12%に達した。こうした「需要」の構造が、問題を複雑にしている背景だ。
転籍制限は企業側の「育成コスト回収」という論理から設けられた。しかしこれは人権問題というより、制度が「誰のための設計か」という根本的な問いに近い。育成期間中に職場環境が劣悪でも法的に逃げ場が限られる——この非対称が失踪という「非制度的な脱出」を生んでいる。
失踪の背景には低賃金・長時間労働に加え、SNSを通じた「もぐり就労」情報の拡散がある。2025年の厚労省調査では、失踪者の約42%が「賃金未払い」を理由の一つに挙げていた。数字の規模は縮小傾向にあるが、速度は遅い。
ベトナム・インドネシア・フィリピンなど主要送り出し国では、来日前に平均50〜80万円の手数料を借金して渡航するケースが多い。この負債構造が「劣悪でも逃げられない」状況を固定化している。育成就労制度はこの送り出し費用問題に対して、まだ十分な手が打てていない。
NPOや法律扶助機関による外国人労働者支援は大都市圏に集中している。2024年の支援団体調査では、地方都市在住の相談者が最寄りの支援窓口にたどり着くまでの平均距離は約45kmに上る。制度の外側にいる人ほど、制度に守られない構造だ。
地方支局時代、合併問題を追って2年間にわたり議事録を全件読み込んだ経験がある。あのとき学んだのは「制度の名称が変わっても、背後の利害構造は容易には変わらない」という現実だった。育成就労制度にも同じ構図が透けて見える。
立場Aの視点——経済界は「1年の定着期間は技術習得に必要な最低限のコスト分担」と主張する。育成投資をした企業が即転籍されれば持続しないという論理は、一定の合理性を持つ。
立場Bの視点——人権団体・労働支援NGOは「転籍制限がある限り、劣悪な環境でも逃げられない労働者は必ず出る」と指摘する。失踪という形の「脱出」が年間9,800件続く現状が、その論拠だ。
私の見立てを短く添えるならば——育成就労制度の評価は「失踪者数が5年で半減するかどうか」で見るべきだろう。看板の架け替えで終わるか、実質的な改善につながるか、数字がすべてを語る。そのカウントダウンはすでに始まっている。
就労者を正面から「労働者」として位置づけた点では、育成就労制度は技能実習から前進した。しかし転籍制限・失踪・送り出し費用の問題は、制度の枠組みを変えるだけでは解決しない構造的課題として残っている。350万人を超えた在留外国人とどう「共生」するか——その問いへの答えを、制度設計の中に見出せるかどうかが今後を決める。あなたの地域の農場や建設現場でも、この問題は静かに進行している。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。
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