レコードが若者の「日常音楽」に、アナログ回帰の波が2026年も止まらない理由

2026年の夏、レコードショップに若い客が増えている。ストリーミングサービスで無限に音楽が聴けるこの時代に、3,000円を超えるアナログ盤を手に取る20代がいる。日本レコード協会の集計では2025年のレコード出荷枚数が約920万枚に達し、前年比約8%増。この流れが、今年も続いている。
東京・渋谷や下北沢のレコードショップでは、週末になると20代とみられる客層がフロアに溶け込む光景が定着しつつある。SNSでも「初めてレコード買った」「ターンテーブル買ってよかった」という投稿が日常的に流れてくる。
「昨日初めてレコード針落とした。あの『ザ』っていう音の瞬間、なんか泣きそうになった」
X(旧Twitter)でこうした投稿に数万件のいいねが集まる。コメントには「わかりすぎる」「それで沼った」と同世代の共感が並ぶ。
オーディオメーカーの調べでは、2024年にレコードプレーヤーを購入した層の35%が20代・30代だという。5年前は同世代が15%以下だったことを考えると、大きな変化だ。
アナログ回帰のムードは、世界的には2010年代半ばから始まっていた。しかし日本では特有の遅れがあり、ここ2〜3年でようやく「若い人がレコードを聴く」風景が違和感なく見られるようになった。
背景にあるのは「サブスク疲れ」と言われる感覚だ。SpotifyにApple Music、Amazon Musicが乱立し、月額1,000円前後で数億曲にアクセスできる。便利ではある。ただ、何を聴けばいいか分からなくなってくる。アルゴリズムに提案された曲を流し続けると、自分が「音楽を選んでいる」感覚が薄れてくる。
その反動として「これを聴く」と決めて盤を買い、針を落とす行為が持つ重みが、逆に価値を帯びてくる。デジタルが飽和した時代ならではの逆説だ。
デジタルコンテンツは消える。サービスが終われば聴けなくなる。そのリスクに薄々気づき始めた人たちが、物理メディアに戻っている。本も同じ動きがあるが、レコードは「インテリアになる」「ジャケットが飾れる」という視覚的な付加価値を持つ。部屋に並べた盤は、自分の感性の地図でもある。
レコードとターンテーブルを「映え」として使う投稿は、TikTokやInstagramで安定した人気を保っている。「#レコード部屋」タグの投稿数は、2024年末時点でInstagram上に60万件超。アナログは「丁寧な暮らし」の演出装置として機能している。が、ちょっと面白いのは、映えきっかけで買った盤に「本当にハマる」人が続出していること。入口の動機と深まり方が、かみ合っている。
以前は中古盤の相場観が分からず入りにくかったレコード市場だが、今は300円の掘り出し物から数万円の希少盤まで、フリマアプリでも流通している。メルカリでは「レコード」カテゴリの取引件数が2024年に前年比42%増加したという。最初の1枚のハードルが下がった。
山下達郎、竹内まりや、松原みきを海外ユーザーが「発見」し、日本の若い世代に逆輸入されるかたちで再評価が起きたのが2010年代末。その余韻はまだ続いている。2025年に再発されたCity Pop関連のアナログ盤の初回プレスは軒並み完売。音楽と都市の記憶が混ざった「気配」が、世代を超えて刺さっている。
私自身、レコードを3,000枚以上持っている。最初の1枚は大学生の頃に下北沢で買った700円の邦楽盤だった。「聴く」というより「触る」「選ぶ」「並べる」行為ごと好きになっていった感覚——あれは体験として分類される何かだ、と今なら思う。
ファッション誌の編集をしていた頃、「物を持つことの意味」が変わってきているな、と感じた時期があった。2010年代のミニマリストブームで「持たない」が美徳とされた。そこから今度は「本当に好きなものだけ持つ」方向に振れてきている。レコードはその最右翼だ。場所は取るし、扱いも面倒。それでも手放せない人が増えている。
Z世代が好きな人なら、これは多分刺さる話だと思う。彼らは「体験」にお金を使うと言われるが、レコードを「聴く行為ごと体験する」ものとして位置づけているように見える。消費というより、生活の解像度を上げる道具として選んでいる。
街を歩いていると、若いカップルがレコードショップをデートスポットとして選ぶ場面をよく見る。5年前にはあまり見なかった光景。その変化は、数字より先に「気配」として届いてくる。
サブスクが便利すぎる時代だからこそ、「わざわざ選ぶ」行為が特別な重みを持ちはじめた。レコードブームは単なるノスタルジアではなく、デジタル過多な生活への静かな抵抗であり、暮らしの手触りを取り戻そうとする動きとみられる。
あなたの部屋には今、どんな音が流れているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。