夏の衣替えが「選ぶ」から「手放す」に変わった理由

毎年6月になると、日本全国で衣替えのタイミングがやってくる。ただ今年は、その「やり方」が少し変わってきた、とSNSを観測していて感じる。
「何を出すか」ではなく「何を手放すか」を中心に語る投稿が目立つ。X(旧Twitter)では6月に入ってから「衣替え 手放す」の検索ボリュームが前年同期比で約1.4倍に増加しており、インスタグラムでは「#カプセルクローゼット」のタグが国内投稿数15万件を超えた。気配の変化、という意味ではっきり見える数字だ。
今年の衣替えシーズンに目立つのは、「服の総量を減らす」という意識の高まり。ユニクロが2026年春に発表した生活者意識調査では、20〜40代の約62%が「手持ちの服が多すぎると感じている」と回答しており、うち38%が「今シーズン中に枚数を絞りたい」と答えた。
Xのタイムラインでもこんなポストが流れてきた。
衣替え中。去年も「これ来年着る」って残したやつ、また一度も着てなかった。今年こそ手放す基準を先に決めてからしまうことにした。30枚→15枚を目標に。
匿名の一般ユーザーによる投稿だが、3,200以上のいいねがついていた。「あるある」の共感だけじゃなく、「基準を先に決める」という方法論への共感が刺さっているのが、ちょっと面白い。
コロナ禍以降、ファッション消費の在り方は大きく揺れた。2021〜2022年のリベンジ消費でいったん増えた服の量が、2025年ごろから「多すぎる」という反動として顕在化している。国内アパレル市場の出荷金額は2025年に約3兆1,000億円と回復基調にある一方で、フリマアプリ大手メルカリの発表によると2025年度の衣類出品数は前年比で17%増加した。買っているが、同時に手放してもいる。この同時進行が今の消費行動の実態だ。
インスタグラムやTikTokで「クローゼット整理vlog」の再生数が伸びている。特に「所有枚数を数える」動画は、20代女性を中心に高い支持を集めており、「私は全部で47枚だった」というような具体的な数字の開示がフォロワーの共感を呼ぶ形式になっている。数字より気配、とは言いつつ、こういう「自分の数字を可視化する」行為がトレンドになっているのは面白い逆説だ。
2023年ごろまでは海外セレブやファッションマニアの文脈で語られることが多かった「カプセルクローゼット」という概念が、2026年の今、ごく普通の生活者の検索ワードになってきた。Googleトレンドでの国内検索数は2年前の3倍以上。「おしゃれな人の話」ではなく「自分の話」として読まれるようになってきている。
数年前は「ときめくかどうか」という感覚的な基準が主流だったが、最近は「去年何回着たか」「コーディネートの組み合わせが3パターン以上作れるか」という稼働率ベースの判断軸が広がっている。感性から実用性へのシフト。服を好みではなく「機能」として見直す視点が、生活者層に浸透してきた証拠だろう。
断捨離後に「いいものを1枚だけ買い直す」という流れも見える。「量より質」は昔からある言葉だが、今は「手放してから買う」という順序の話をしている人が増えた。余白をつくってから埋める、という発想の転換がちょっと面白い。
ファッション誌にいたころ、毎年6月号の「衣替え特集」を作るたびに悩んでいた。読者が本当に知りたいのは「今シーズンのトレンド色」ではなく、「クローゼットをどう整理するか」だと気づいたのは、実は転職して数年経ってからだった。
街歩きをしていても感じる変化がある。古着屋への持ち込み客が増えていて、特に「状態のいい服をまとめて持ってくる20〜30代」が目立つ、と下北沢のショップスタッフが話してくれた。かつての断捨離ブームとは微妙に違う。あのころは「捨てる」感覚だったが、今は「循環させる」感覚に近い。
服と自分の関係を問い直す、という行為が、ライフスタイルの一部として定着しつつある。これは自分の時間や空間に「意図を持つ」ことへの関心の延長線上にある動きで、睡眠、食事、情報との向き合い方と同じ文脈で語れると思う。
カジュアルなファッションが好きな人なら、これは多分刺さる——着る服を減らすことで、逆に「今日何着る」が楽しくなる、という感覚。
2026年の衣替えは、「増やすシーズン」から「整えるシーズン」へと意味が変わりつつある。服を手放す基準を持つことは、自分の暮らしに軸を持つことと、案外つながっている。あなたのクローゼットには今、何枚の服がかかっているだろう。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。