物価高騰3年目——単発給付金では追いつかない低所得世帯の「生活実態」

まず事実から確認しておく。総務省の消費者物価指数によれば、2026年5月時点の総合指数は2020年比で約115.8ポイント、食料品に限れば120ポイントを超える水準が続いている。政府は2024年度から2025年度にかけて、住民税非課税世帯を対象とした給付金を3回実施した。1回あたりの支給額は1世帯7万円から10万円の範囲だったが、現場からは「焼け石に水」という評価が消えない。
なぜ給付が繰り返されても「足りない」という声が続くのか。それはこれが物価問題というより、所得構造の問題に近いからだ。
X(旧Twitter)には今月も同様の声が並ぶ。
電気代また上がった。非課税世帯の給付金、もう使い切った。次はいつ出るんだろう。頑張って働いても給与は変わらない(40代・パート・匿名)
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2025年版)によれば、等価可処分所得の中央値の50%を下回る「相対的貧困層」は全人口の約15.7%。このうち65歳以上の単身世帯では約22%が該当する。年金額は2026年度も物価スライドで名目上引き上げられたが、実質賃金換算では2年連続でマイナスとなっている。
政策設計の観点で見ると、単発給付は「政策コストを最小化しつつ即効性を演出できる」手法だ。恒久的な基礎控除引き上げや生活保護基準の見直しとなれば財政規模が格段に大きくなるため、与党内でも合意形成に時間がかかる。
立場Aとして、政府・与党側は「物価動向に合わせて機動的に対応している」「恒久的な制度変更より柔軟な対応が現下の経済情勢には適している」と主張する。実際、2025年度予算では低所得者支援に関連する給付費として約6,400億円が計上された。
立場Bとして、野党や支援団体は「給付のたびに申請手続きが発生し、必要な人に届かないケースがある」「生活保護の捕捉率は推計で約2割にとどまり、制度の網の目が粗い」と批判する。NPO法人の調査(2025年12月)では、給付金を受給した低所得世帯の約61%が「6カ月以内にほぼ使い切った」と回答している。
生活保護の受給資格を持ちながら申請していない世帯が多数存在する問題は長年指摘されてきた。スティグマ(社会的烙印)への恐怖、複雑な申請手続き、「水際作戦」と呼ばれる窓口での事実上の抑制——これらが重なり、必要な支援が届かない回路が形成されている。
総務省労働力調査(2026年1〜3月期)によれば、非正規雇用比率は全雇用者の37.2%。非正規労働者の時給上昇率は最低賃金引き上げで改善されつつあるが、物価上昇分を差し引いた実質的な購買力は依然として回復していない。
食料・光熱費への支出割合が高い高齢単身世帯にとって、インフレの打撃は若年世帯より大きい。年金生活者のエンゲル係数(食費比率)は2026年推計で約28%に達しており、2020年比で約4ポイント上昇している。
私がこの問題を取材し始めたのは、地方支局時代に担当した過疎地域の福祉行政がきっかけだった。当時、窓口の担当者から「申請に来られない人が一番困っている人だ」と言われた言葉が今も頭に残っている。
単発給付の問題は、「もらえる人」と「もらえない人」の分断がむしろ給付ごとに可視化される点にある。非課税世帯の認定は前年所得に基づくため、直近で収入が激減した人が対象から外れることもある。制度の時間軸と生活の時間軸はズレている。
これは財政論というより、制度設計の精度の問題に近い。データベースと給付の自動連携、申請の簡素化、支援団体を通じたアウトリーチの強化——こうした「届ける仕組み」への投資が、金額の議論と並行して必要だ。
恒久的な制度改正か、機動的な単発給付か——このどちらかというより、「届ける精度」を上げる議論が今最も欠けている。参院選の公約議論でもこの論点が中心に来るかどうか、引き続き注視したい。
物価高騰3年目を迎えた今、問われているのは給付額の大小だけではない。支援が「必要な人に、必要なタイミングで」届く経路を整備できるかどうかだ。単発給付の繰り返しは、構造的な課題への解答を先送りしているにすぎない。あなたの自治体の福祉窓口は、今日も開いているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。