「育成就労制度」移行2年目の現実——外国人労働者政策の構造と課題

技能実習制度の廃止と「育成就労制度」への移行が本格化して2年が経つ。2024年6月に成立した育成就労法は、「人権侵害の温床」と批判され続けた旧制度を抜本的に見直す試みだ。しかし移行期の現場では、制度の文言の前進と現実の遅滞が同時に進行している。
育成就労制度は2027年の完全施行に向け、段階的な移行が続く。旧技能実習制度の下で就労していた外国人は2023年末時点で約35万人。2025年末には外国人労働者全体の数が約218万人と過去最多を更新し、うち育成就労への切り替えを進めるケースが増えている。
「転籍の手続きが複雑で、書類をそろえるのに3ヶ月かかった。その間、賃金が一部未払いだった」(SNS投稿より、匿名)
法務省・厚生労働省の共同資料によれば、2025年度に確認された転籍申請件数は前年比で約1.7倍。しかし申請が受理されたケースの約30%で、転籍後の住居確保に問題が生じたことも報告されている。
技能実習制度は1993年の発足以来、建前は「途上国への技能移転」とされていた。だが実態は、人手不足を補う低賃金労働力の供給源として機能していたと多くの有識者が指摘してきた。2022年には9,000人を超える実習生が失踪を届け出るという深刻な状況が続き、政府は抜本改革に踏み切った経緯がある。
育成就労制度の最大の変更点は「転籍の自由化」だ。旧制度では原則禁止だった職場移動を、同一分野内であれば1〜2年の就労後に認める仕組みに改めた。「働く権利の保障」として評価する声がある一方、「育成コストを回収できない」という中小企業経営者側の懸念も根強い。
地方自治体の対応も一様ではない。農村部では育成就労生が地域コミュニティに定着する事例もある。しかし都市近郊の工場集積地帯では、言語支援が追いつかず、孤立した外国人労働者が生活困窮に陥るケースが後を絶たない。
育成就労制度が旧制度と大きく異なる点は、転籍を権利として明文化した点だ。しかし実際には、住居を提供する企業との関係で転籍に踏み切れない労働者が少なくない。転籍後の住宅確保を自治体が支援する仕組みの整備が、制度の実効性を左右する。
大手製造業は日本語研修や生活相談窓口を整備しているケースが多い。一方、従業員50人未満の中小・零細企業では対応が遅れ、外国人労働者が制度内容を十分に理解しないまま就労を続ける事例が散見される。制度改正の恩恵が届く先が、企業規模によって偏っている。
総務省が2025年に実施した調査では、外国人住民が多い市区町村の約43%が「多文化共生施策の予算が不十分」と回答した。制度の文言が先行する一方で、地域レベルの受け皿整備は遅れたままだ。これは「育成就労」以前から続く構造問題に近い。
ベトナム・インドネシア・フィリピンなど主要な送り出し国との間では、育成就労制度に対応した二国間協定の再締結が進んでいる。しかし交渉の進捗は国によってばらつきがあり、制度の均質な運用には依然として課題が残る。
まず事実から確認しておく。育成就労制度は、旧技能実習制度の問題点を「構造的に」解決しようとした点で一定の評価ができる。転籍の自由化、監理団体への外部監査義務化、日本語能力要件の段階的引き上げ——いずれも「人を使う制度」から「人を育てる制度」への転換を意図した改正だ。
しかしこれは、「人手不足」という経済的需要と「人権保障」という価値規範の間で、制度設計者がいかに綱渡りをしているかの証左でもある。これは外国人労働者政策というより、日本の労働市場構造そのものの問題に近い。
かつて地方支局で合併議論の議事録を2年間読み続けた経験から言えば、制度改正が現場に定着するには最低でも5〜10年のサイクルが必要だ。2027年の完全施行後も、地域ごとの実態把握と継続的な修正が欠かせない。
「立場A」として、受け入れ企業の経営者側は「転籍の自由化で育成コストが回収できない」と訴える。「立場B」として、支援団体側は「転籍を阻む事実上の慣行が温存されている」と指摘する。どちらの声も、移行期という同じ現実の別の側面を照らしている。著者の見立てを添えるなら、両方が正しく、それゆえに制度の精緻化には時間がかかる。
育成就労制度の完全施行まで、あと1年余り。変わったのは制度の文言だけでなく、働く人の権利への視座でもある。しかしその権利が現場で機能するかどうかは、自治体・企業・市民社会それぞれの対応にかかっている。あなたの地域では、隣に暮らす外国人労働者の姿はどう見えているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。