ヤングケアラー支援法施行から1年——「見えない介護」の現在地

まず事実から確認しておく。2025年4月に施行されたヤングケアラー支援法は、施行から1年4か月が経過した。文部科学省と厚生労働省が今年度実施したフォローアップ調査では、中学2年生の約5.7%が「日常的に家族の介護・世話をしている」と推計され、全国で少なくとも約25万人に上るとみられる。制度という「器」は整いつつあるが、中身が追いついているかは別の問いだ。
ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家事・育児・介護・看護などを日常的に行う子どもや若者を指す。文科省の2024年度調査によると、全日制高校2年生の約4.1%も該当するとされ、問題の広がりは義務教育段階にとどまらない。
2026年9月13日のXでは、支援を受けた元ヤングケアラーとみられるアカウントが次のように投稿し、1,800件を超えるリツイートが集まった。
制度ができても、誰も気づいてくれなかった3年間は戻らない。今の子たちには早く届いてほしい。
声を上げられない当事者への関心は、依然として高い。
ヤングケアラーが社会問題として広く認識されるようになったのは2020年前後だ。コロナ禍で在宅時間が増え、子どもが家族ケアを担う実態が可視化されたことが転換点となった。その後2022年、政府は「福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクト」を発足させ、2025年4月の法整備へとつながった。
法律では、①学校による早期発見・相談体制の整備、②市区町村によるアセスメントと支援計画の策定、③介護・福祉サービスとの連携——の3軸が義務化された。しかし施行直後から、自治体間の対応格差が問題視されてきた。これは制度の欠陥というより、財源配分と人材構造の問題に近い。
法律では学校が早期発見の第一線とされた。だが文科省が2026年7月に行った教員向けアンケートでは、「ヤングケアラーの疑いがある生徒と面談した経験がある」と答えた教員は全体の約31%にとどまり、「どう対応すればよいかわからなかった」と答えた割合は46%に達した。全国2万3000人超の教員欠員問題と連動し、現場のキャパシティは限界に近い。
厚労省の2026年4月調査では、支援コーディネーターの配置率は政令市で92%に達した一方、人口5万人未満の市町村では34%、人口3万人未満の市町村の約68%が「専任担当者なし」と回答した。離島・山間部では支援機関まで車で1時間以上かかるケースも報告されており、地理的条件が支援の到達を阻んでいる。
支援法施行後も、当事者が自ら相談窓口を訪れる件数は想定を下回っている。内閣府の調査では、ヤングケアラー当事者のうち「誰かに相談したことがある」は全体の約22%。残る78%が「家族に迷惑をかけたくない」「自分がケアすることが当然だと思っていた」などを理由に挙げた。制度は整ったが、「相談する」という行動そのものへのハードルは依然として高い。
地方支局時代、人口減少地域の合併議論を2年かけて追いかけた経験がある。あの頃も、「制度は中央で作り、実態は地方で生まれる」という非対称をくり返し目の当たりにした。ヤングケアラー問題も、構造は同じだと感じている。
法律という「外枠」は2025年に整った。しかし現場で動くのは教員であり、福祉士であり、時には民生委員だ。彼らのリソースはコロナ後から一貫して逼迫しており、新たな任務を積み上げる余力があるとは言いがたい。
立場A——支援法に前向きな自治体からは「法的根拠ができたことで関係機関が連携しやすくなった」という声が聞かれる。立場B——リソース不足を抱える現場からは「義務だけ増えて、人もカネも足りない」という指摘が根強い。
私の見立てとしては、この問題の本質は「制度の有無」ではなく「制度を動かす人材と財源の地方への配分」にある。次の焦点は2027年度予算編成で、地方交付税の算定基準にヤングケアラー支援コーディネーターの人件費が組み込まれるかどうかだ。そこが変わらなければ、地域格差は縮まらない。
ヤングケアラー支援法は施行1年を超えた。制度という「器」は整いつつある。しかし器に中身を注ぐ——人材・財源・地域間の連携強化——は、まだ道半ばだ。次の山場は2026年秋の臨時国会での補正予算議論になる。あなたの地域の学校や福祉窓口には、今何人の専任担当者がいるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。