東京圏の家賃、5年で平均18%上昇——住宅政策の空白と市場構造を読む

まず事実から確認しておく。東京圏(1都3県)の平均募集賃料が2021年比で約18%上昇したと、不動産情報会社のレポートが今月明らかにした。これは同期間の消費者物価指数(CPI)上昇率・約11%を大きく上回る数字だ。家賃の問題は単なる市場の動きではなく、生活保護世帯の住居費、若年層の郊外移住、中小企業の採用難など、社会の複数の断面と交差する構造問題として浮上している。
不動産情報大手の調査(2026年8月公表)によると、2026年7月の東京圏における1LDK換算の平均募集賃料は月額約12万3,000円。2021年7月から18.2%の上昇となった。新築マンションの平均価格は2025年に初めて9,000万円を超え(不動産経済研究所)、新築が高騰するほど中古・賃貸に需要が流れ、賃料を押し上げる構図が続いている。
X上では8月16日夜、この話題が急速に広がった。
「家賃更新したら月3,000円上がった。給与はほぼ据え置き。これって誰かが解決してくれるの?」
こうした投稿が共感を集め、「家賃高騰」は同日のトレンド上位に浮上。午後10時時点の推定投稿数は4万件を超えた。
家賃上昇の構造的背景は主に2つある。
1つは東京圏への人口集中の継続だ。総務省の住民基本台帳データによれば、2025年1月時点で東京圏の人口は約3,620万人。コロナ禍での「分散」トレンドは2023年以降に都市回帰へ転じ、5年前より約40万人増加した。
もう1つは住宅供給の鈍化だ。建設資材費と人件費の高騰が新規供給コストを押し上げ、中小デベロッパーを中心に着工手控えが広がった。供給が絞られる中で需要だけが膨らむ——これが価格を下支えしている。
生活保護の住宅扶助基準額は東京都23区で単身者月額5万3,700円(2024年度)。平均賃料との乖離は大きく、「基準内で物件が見つからない」という声が支援団体から上がっている。厚生労働省は基準改定の協議を2025年から始めたが、実施は2027年度以降の見通しだ。
民間調査では20〜30代の「希望居住地」として埼玉・千葉北部が上昇傾向にある。都心家賃の回避が動機だが、通勤時間の増加が新たな問題として浮上しており、「職住近接」の理念と逆行している。
都心でオフィスを構える中小企業の人事担当者からは、「家賃負担を理由とした内定辞退が増えた」という声が出ている。住宅手当の拡充で対応する企業もあるが、原資確保が難しい事業者は手をこまねいている状態だ。
社会部の記者として、住宅問題の取材は何度も経験してきた。毎回感じるのは、これは「家賃が上がった」という話というより、「公的住宅政策が市場の変化に追いついていない」という制度の問題に近い、という点だ。
立場Aの見方として、市場介入に慎重な論者は「家賃規制は供給を歪める」と指摘する。ドイツやスウェーデンで導入された家賃統制が長期的に住宅供給を減少させたとする研究は、この立場を裏付ける根拠として挙げられる。
立場Bの見方として、公的住宅の拡充を求める論者は「市場だけに任せれば低所得層が排除される」と主張する。日本の公営住宅戸数は1970年代から実質横ばいで、入居競争率が平均8倍を超える自治体も首都圏には存在する。
私自身の見立てを添えるならば、どちらの立場にも一定の合理性がある。問われているのは政策の優先順位と予算の配分だ。国土交通省の住宅セーフティネット制度の登録戸数は2025年末で約100万戸を超えたが、低所得者が実際に入居できている割合は2割に満たないという現場の声もある。制度があることと、機能することは別の話だ。
家賃高騰は「東京だけの問題」でも「景気の話」でもない。人口集中・建設コスト上昇・住宅政策の空白が重なる構造問題だ。政府は2026年内に住宅政策の基本計画改定を予定している。その内容が市場への追認に終わるのか、セーフティネットの実質的強化に踏み込むのかが問われる局面だ。あなたの住む街で、家賃は今どう動いているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。