不登校35万人超の現実——「学校復帰」一辺倒から「多様な学び」へ政策転換は進むか

まず事実から確認しておく。文部科学省が2026年6月に公表した最新調査によれば、小中学生の不登校児童生徒数は35万2,000人に達し、過去最多を更新した。2019年時点の約18万人から、わずか6年で倍増した計算になる。政府は「多様な学び場の確保」を政策目標として掲げてきたが、数字が示す現実との乖離はなぜ生まれるのか。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2026年6月公表分)によると、2025年度における小中学生の不登校数は35万2,000人、在籍児童生徒に占める割合は3.8%に上る。クラスに1〜2人は「学校に行けない子」がいる計算だ。
X(旧Twitter)では本調査の公表を受け、議論が広がった。
「うちの子も不登校5年目。フリースクールはあるけど月3万円かかる。公的支援の対象にならないと言われ続けてる。政策の転換ってどこに届いてるの」
こうした当事者家族の声は、政策と現場の温度差を端的に映している。
不登校が急増した背景には複数の構造的要因がある。
第一に、新型コロナウイルス感染症拡大期(2020〜2022年)に多くの子どもが「学校に行かなくても生活は成り立つ」という経験をしたことが指摘される。登校習慣が一度途切れたことで、再登校へのハードルが上がったと考えられている。
第二に、「いじめ認知件数」の増加との相関だ。同調査では2025年度のいじめ認知件数も約71万件と過去最多水準にある。因果関係の特定は慎重を要するが、学校空間への不安が不登校の一因となっているという見方は根強い。
第三の要因として、不登校の「見え方の変化」も見落とせない。以前は家庭が隠しがちだったケースが、フリースクール利用や支援機関への相談として可視化されるようになったとの分析もある。
2016年施行の「教育機会確保法」はフリースクール等を「多様な学習機会」として初めて国が認めた法律だが、出席認定や補助金の扱いは各自治体の判断に委ねられたままだ。全国約1,800か所のフリースクールのうち、自治体から補助を受けているのは2割以下とされる(NPO法人フリースクール全国ネットワーク、2025年調査)。
文科省は2023年度から「校内教育支援センター(校内サポートルーム)」の整備を推進し、2025年度末時点での設置率は小中学校全体の約42%に達した。ただし都市部と地方では設置率に15〜20ポイントの差があり、人口減少地域ほど専任スタッフの確保が難しい現状がある。
フリースクールの月額費用は全国平均で約3万3,000円(文科省委託調査、2024年)。一方、フリースクール利用に対する国の直接補助制度は現時点で存在しない。自治体独自の補助を設けているのは東京都、大阪府など一部にとどまり、「選択肢はあるが、選べない家庭」が構造的に生まれている。
現場教員へのアンケート(日本教職員組合、2025年)では、不登校対応に「かなりの時間を取られる」と答えた担任が63%に上った。家庭への連絡・支援機関との調整・授業準備を同時にこなす体制の限界が、支援の質にも影響している。
地方支局時代に、山間部の中学校で不登校の生徒を追ったことがある。当時(2010年代初頭)は「学校に戻す」ことが支援の唯一の目標だった。保護者も、担任も、行政担当者も、誰も悪意はない。ただ、システムの出口が一つしかなかった。
今回の35万人という数字は衝撃的だが、これは○○というより、出口が増えていないまま入口だけが広がった問題に近い。法律は整い、フリースクールは増えた。しかし費用・地域差・出席認定という3つの壁が残存する限り、「多様な学び」は建前に終わりかねない。
立場Aの見方——教育関係者の一部からは「今こそ義務教育の再定義が必要だ。通学を前提とした制度を根本から見直すべき」との声がある。
立場Bの見方——一方で「学校は社会性を育む場でもある。安易な学校外シフトは長期的な孤立リスクを高める」と指摘する専門家も少なくない。
著者の見立てを短く言えば、この議論は二項対立で解決しない。必要なのは、学校内外のどちらを選んでも「経済的コストが同程度」「公的記録に残る」「次の進学・就労につながる」という三条件を整えることだ。政策はその条件整備から議論されるべきだろう。
35万人超という数字は、個々の子どもの事情の積み重ねだ。制度の「建前」と「現場」の乖離を埋めるには、フリースクールへの公的補助の全国統一化、校内支援員の人員確保、そして担任一人に任せる構造の解体が必要になる。次の概算要求(2026年8月)でこのテーマがどう扱われるか——そこが次の確認ポイントになる。あなたの地域の学校では、この問題にどう向き合っているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。