春闘2026「賃上げ格差」が鮮明に——大企業5%超・中小2%未満が映す回復の非対称

まず事実から確認しておく。2026年春季労使交渉(春闘)の集計では、東証プライム上場の大手製造業を中心に賃上げ率が平均5.2%に達した一方、従業員300人未満の中小・中堅企業は1.8%前後にとどまったとみられる。消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が2025年通年で2.4%だったことを踏まえると、この差は「名目賃上げ」を超えた実質購買力の分岐を意味する。
連合(日本労働組合総連合会)が2026年5月末に公表した最終集計によると、組合員のいる大企業(1,000人以上)の平均賃上げ率は5.24%。これは1991年以来35年ぶりの高水準とされた前年(4.58%)をさらに上回る数字だ。
一方、厚生労働省が中小企業を対象に実施した「賃金引上げ等の実態に関する調査」(2026年3月時点)では、賃上げを実施した中小の平均引き上げ額は月額3,800円程度。率に換算すると1.7〜1.9%のレンジとなる。
X(旧Twitter)上では、こうした格差を実感する声が相次いだ。
大企業に勤める友人は「今年もベア2万」と言っていたが、うちの会社(従業員40人)は定昇込みで6,000円。物価はどちらも同じように上がっているのに。
この投稿には2万件を超えるいいねが集まり、「賃上げ格差」「中小切り捨て」のタグとともにトレンド入りした。
構造的な要因は複数重なっている。
第一に、価格転嫁力の非対称性だ。大企業は原材料費・エネルギーコストの上昇分を製品・サービス価格に転嫁しやすい立場にある。一方、中小企業は大手との取引関係上、値上げ交渉が困難なケースが多く、コスト増を賃上げ原資に回せない構造が続く。公正取引委員会の2025年調査では、価格交渉を「断られた・値引きを求められた」と答えた中小企業は37%に上った。
第二に、労働組合の組織率格差がある。連合加盟組合の組織率は大企業で40〜60%程度に対し、従業員100人未満の企業では5%を下回る。組合のない職場では、交渉の土台そのものがない。
第三に、政府の賃上げ促進税制の恩恵が届きにくい問題だ。2022年以降、法人税控除率が拡充されてきたが、そもそも赤字続きで法人税を払っていない中小では活用できない。
名目賃上げ率5.2%は数字としてはインパクトが大きい。しかし2025年の物価上昇(2.4%)を差し引いた実質賃上げは大企業でも約2.8ポイント。中小は実質マイナスの可能性が高い。「賃上げが広がっている」という報道の一方で、実感が乏しい層が確実に存在する。
政府は2023年から「パートナーシップ構築宣言」を推進し、下請けへの価格転嫁を促してきた。宣言企業数は2026年6月時点で2万社を超えた。だが現場の徹底度は依然ばらつきが大きく、「宣言はしたが交渉の場は変わっていない」(中小製造業関係者・匿名)という声も取材では聞かれる。
賃上げ格差は業種規模だけでなく、地域にも走っている。東京・愛知・大阪などの大都市圏と、人口減少地域の地方中小では、労働市場の逼迫度が異なり、賃上げ圧力の強さが違う。地方支局時代に自治体の雇用統計を読み続けた経験からすると、県内の最低賃金水準と中小賃金の連動は、今後数年で格差の主戦場になるとみている。
これは「大企業が儲かって中小が貧しい」という単純な構図というより、価格転嫁力・組合組織率・税制活用力という三つの構造変数が重なった問題に近い。
遊軍記者として災害取材を経験した際、「国の制度はある、だが届かない」という場面を何度も見てきた。今回の賃上げ格差も同じ文法だ。制度や政策の数字を表面でなぞれば「賃上げが進んでいる」と言えるが、受け取り手の構造に注目すると、恩恵の分布は極めて偏っている。
立場Aとして経済界は「今後は中小への波及が続く、成果の遅れは構造的に不可避」と主張する。立場Bの労働側は「物価が先行している以上、波及を待つ余裕はない」と反論する。どちらの主張にも根拠はある。問題は、どちらの言葉が届く前に家計が悲鳴を上げてしまうことだ。
政府が「賃上げ税制の中小向け要件を再設計する」方向で検討を始めたとの情報も出始めた。国会会議録では2026年4月の参院財政金融委員会でも複数の委員が同趣旨の質疑をしており、制度変更の議論は水面下で動きつつある。
大企業と中小の賃上げ格差3ポイント超は、数字の問題であると同時に、社会構造の問題だ。物価が2年超にわたり上昇し続ける中で、「誰の賃金が上がったか」は、消費動向・地域経済・社会保険財政にも連鎖していく。あなたの職場や地域では、この数字がどう感じられているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。
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