円安と利上げのはざまで——3Q決算が問う日本企業の「稼ぐ力」

2026年10月、日本の3Q決算シーズンが静かに幕を開けた。日銀は今年3月と7月の2度にわたり利上げを実施し、政策金利は現在0.75%。円相場は前日終値で1ドル=148円台と依然として歴史的な円安水準にある。ここで重要なのは円安の水準そのものではなく、利上げ局面においてその「恩恵」が以前と同じように機能するかどうかだ。
10月第2週時点で、東証プライム上場企業の3Q(7〜9月期)決算発表が本格化している。今回の決算期における最大の焦点は、円安と利上げという「二つの力」が企業業績にどう作用しているかだ。
内閣府の法人企業景気予測調査(2026年7〜9月期)によれば、製造業大企業の景況感は前期比でわずかに低下。一方、財務省の貿易統計では2026年1〜8月の輸出額は前年同期比で約4.2%増と、数字だけ見れば悪くない。
X(旧Twitter)ではこんな投稿が注目を集めた:
「利上げ後の初決算、注目してる。円安は続いてるのに景況感がどこかピリッとしない。借入コストが上がって設備投資計画を見直す企業が出てきてる感じがする」
この感覚は、マクロデータにも滲み出ている。
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除して以降、段階的な利上げを続けてきた。2026年3月に0.5%、同7月に0.75%と引き上げ、現在はその「様子見」フェーズにある。
かつての円安局面——特に2022〜2023年の1ドル=150円超の時代——では、輸出企業の為替差益が業績を下支えする構造が明確だった。だが今回は様相が異なる。政策金利の上昇によって、企業の借入コストは2年前比で約1.2〜1.5%ポイント高まっており、設備投資や運転資金の調達コストが静かに侵食しつつある。
加えて、米国ではFRBが2026年前半の利下げサイクルを経て、現在は政策金利を4.25〜4.50%で維持。日米金利差は縮小傾向にあるものの、依然として3.5%超の開きがあり、円高への転換には時間を要するとみられる。
製造業大手は今期の想定為替レートを1ドル=145〜148円前後に設定しているケースが多い。現在の実勢レートとほぼ合致するため、為替の「上振れ益」は限定的だ。むしろ注目すべきはヘッジコストの上昇と現地調達比率の変化で、「円安=そのまま増益」という単純計算が成り立ちにくくなっている。
食品・小売・外食などの内需セクターでは、原材料費・人件費の上昇分を価格に転嫁できているかどうかが業績を左右する。総務省の消費者物価指数(2026年8月)では生鮮食品を除くコアCPIが前年比+2.3%と、依然として日銀目標の2%をわずかに上回る。転嫁に成功した企業と、価格競争の圧力から断念した企業との間で、今後数四半期にわたり業績格差が広がる可能性がある。
銀行・保険セクターは利上げの恩恵を最も直接的に受ける。貸出金利の上昇と国債利回りの正常化によって、国内金融機関の利ざやは2〜3年前比で改善傾向にある。この構造変化は短期的な業績にとどまらず、中期的な収益モデルの変革を促すという意味で注目に値する。
日銀決定会合を5年間番記者として取材してきた経験から言えば、今の局面は「正常化の蜜月期」が終わり、現実との摩擦が始まるフェーズだと感じる。
短期では、3Q決算の数字は概ね堅調に見えるだろう。円安と名目売上高の増加が表面上の業績を支えるからだ。中期では、借入コストの上昇と消費者のコスト疲れが企業収益を圧迫し始め、設備投資の抑制が潜在成長率に影響を与えるリスクがある。長期では、日銀の政策正常化が賃金上昇や内需拡大と連動するか否かが、日本経済の真の構造転換を問う試金石になる。
ここで重要なのは個別企業の数字ではなく、「円安依存から内需主導へ」という構造変化が本物かどうかを確かめる踏み台として、今回の決算シーズンを読むことだ。
声明文の行間を読む訓練を積んできた経験で言えば、企業IRの「コスト増は想定内」という言葉の背後に、どれだけの不確実性が潜んでいるかを見極めることが今期の読み方になる。
円安と利上げが並走するという、かつてなかった経済環境の中で3Q決算シーズンが始まった。数字の表面に振り回されず、「誰が恩恵を受けて、誰がコストを負っているか」という構造を追うことがこの局面での正しい読み方ではないか。
あなたが注目しているセクターで、「利上げ恩恵組」と「コスト転嫁苦戦組」の違いはどこに現れているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(黒田圭吾)が執筆しています。