秋の決算ラッシュ、円148円台が映す輸出・内需「明暗の構造」

2026年10月20日現在、東京外為市場では1ドル=148円台の円安水準が続いている。国内主要企業の4〜9月期(第2四半期)決算が今週から本格化する中、輸出型企業の「想定為替レートとの乖離」と、輸入コスト上昇にさらされる内需型企業の「下方修正リスク」という二つの潮流が同時進行している。
東証プライム上場企業のうち3月決算企業の多くが、10月末にかけて4〜9月期の業績を順次開示する。財務省が公表した2026年8月の貿易統計によれば、輸出金額は前年同期比+8.3%増となり、円安効果が統計に表れた。一方、輸入金額も同+6.1%増と高止まりしており、素材・エネルギーを海外調達する製造業や小売業への圧迫は続く。
開示が始まった大手電機メーカーの決算発表を受け、Xではこんな声が上がった。
想定為替が135円で実勢が148円なら単純計算では大幅な業績上振れのはず。ただ、ヘッジ比率と原材料費の増加分でかなり打ち消されている会社もある。構造を見ないと数字だけでは判断できない。
ここで重要なのは「円安=全面的な追い風」という単純図式ではなく、企業ごとのヘッジポジションと原材料調達比率の方だ。
日銀は2026年7月の政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げた後、9月・10月の両会合では据え置きを決定している。植田総裁は会見で「実質賃金のプラス定着と2%インフレの持続性を確認しながら判断する」との慎重スタンスを維持している。消費者物価指数(CPI)は2026年9月に前年比+2.4%と日銀目標の2%を超えた水準が続く一方、実質賃金はようやくプラスに転換したばかりだ。
米国では連邦準備理事会(Fed)が2026年3月以降に3回の利下げを実施し、フェデラルファンド(FF)レートは現在4.25〜4.50%で推移している。日米金利差が依然として大きいことが円安圧力の構造的な背景となっている。
主要輸出企業のコンセンサス想定為替は1ドル=135〜140円とされることが多い。実勢148円台との乖離は約8〜13円。この差が営業利益の押し上げに直結するが、為替予約(ヘッジ)によって効果の半分以上を相殺している企業も少なくない。判断の一次ソースとして、各社のIR開示(決算補足説明資料)に記載されたヘッジ残高と前提為替を確認するのが基本だ。
自動車・精密機器など輸出比率の高いセクターは円安恩恵を受けやすい。ただし同じ製造業でも、原材料を全量輸入する食品・化学・繊維では円安によるコスト増が粗利を圧縮する。小売・外食は原材料費の上昇分を価格転嫁できているかどうかで業績が大きく分かれる構造だ。
短期的には10月末の政策決定会合での再据え置きが有力視される。中期的には実質賃金の安定的なプラス定着とCPI前年比2.0〜2.5%の持続が確認されれば、2026年度内に追加利上げ(0.75%→1.00%)へ踏み切る可能性がある。長期的には1%前後への政策金利正常化が円相場を140円前後に引き寄せる可能性もあるが、それはFedの利下げ幅と地政学リスクとの綱引きになる。
日銀の番記者を5年経験した私の感覚では、会合後の声明文にある「賃金・物価の好循環」の文言が強調されるか、それとも「慎重に見極める」が前に出るかで市場の読みが大きく変わる。今回は円安と輸入インフレという双方向の圧力が同時にかかっているため、植田総裁の会見は例年以上に注目したい。
過去の金融引き締め局面——2000年のゼロ金利解除、2006年の量的緩和解除——を振り返ると、いずれも「時期尚早論」と「遅すぎ論」が拮抗する中で決定が下された。今回も同じ構図だ。ただし当時と違うのは、家計の実質購買力がすでに2年以上圧迫されている点であり、日銀にとって追加利上げの「政治コスト」は決して低くない。
決算を読む際に私が意識するのは、前年同期・市場予想・自社ガイダンスという3点を突き合わせることだ。数字の絶対値よりも、この3軸のどこがズレているかに企業の本音が出る。今シーズンはヘッジ方針の開示と原材料費の変動幅に特に注目している。
秋の決算シーズンは、円安の恩恵と輸入コスト高という対立する力が企業業績にどう反映されるかを確認する場だ。「円安=好業績」の単純図式ではなく、ヘッジ状況・コスト構造・価格転嫁力の3つのフィルターで企業を分類することが、この局面では特に重要になる。あなたが注目しているセクターは、この2力のどちらに傾いているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(黒田圭吾)が執筆しています。