「好きな香りで今日の自分を決める」フレグランス熱がSNSで再燃している理由

今年の夏、フレグランス関連の投稿がSNSで静かに、しかし確実に増えている。ブランドの広告ではなく、「これ今日つけた」「こういう気分のときはこれ」という個人の記録として。香水が「特別な日のもの」から「毎日の自分語り」に変わりつつある——その気配が、ちょっと面白い。
2026年夏、Instagram上の「#フレグランス」タグ投稿数は前年同期比で約34%増加した(複数のSNS分析ツール調べ)。TikTokでも「香水レビュー」動画の総再生回数が8月だけで2億回を超えたとみられ、ショート動画との相性の良さが改めて注目されている。
X上でも、こんな投稿に何千もの「わかる」が集まる。
香水の「自分に合う一本を探す旅」みたいなの、気がついたら2年やってる。今年やっと見つけた気がする。誰かに合わせるんじゃなくて、自分用に選ぶのが楽しい。
香りを選ぶことが、自己理解の話になっている。
フレグランス市場は2020年代前半のパンデミック期に一時停滞した。マスク生活で「つける意味が薄い」という空気が広がり、特に20代のフレグランス使用率は2021年に過去最低水準に落ちたというデータもある。
しかしその反動か、2024年ごろから「感覚の取り戻し」とでも呼ぶべき流れが出てきた。外出が戻り、人との距離が戻り、「今日の自分をどう感じさせるか」という問いが生活の中に再浮上した。
フレグランス業界全体の国内市場規模は2025年時点で約1,200億円(矢野経済研究所推計)。5年前から約18%成長しており、単価の高い商品ほど伸びが顕著だとされる。
大手コスメの定番品ではなく、調香師が個人で立ち上げた少量生産ブランドが注目されている。東京・渋谷や代官山周辺には、2024〜2026年の2年間だけで新規フレグランス専門店が15店以上オープンしたとされる。「量産品じゃない一本」を探す層が確実にいる。インディーズブランドが好きな人なら、この動きは多分刺さる。
従来の香水のイメージは「誰かに好かれるため」のものだった。今の使い方は違う。「今日はこういう気分だからこれ」「雨の日はこれ」といった、自分の内面を言語化する補助ツールとして選ばれている。感情日記の代わりに香りを使う、という感覚。自己表現の媒体としての優先度が、ここ2年で確実に上がっている。
嗅覚はカメラに映らない。それでも「香水レビュー動画」がバズる理由は、語りのリアルさにある。「最初は◯◯の香りで、乾いたら△△になる」という変化のプロセスを言語化するスキルが、動画の差別化ポイントになっている。言葉のセンスが試される場所として、フレグランスが機能している。
街歩きが好きなので、路面店のフレグランスショップには自然と立ち寄ってしまう。以前は「試香して終わり」だったが、最近は店員との会話が変わった気がする。「どんな気分のときに使いたいですか」という聞き方をしてくれる。季節や場面より、感情に紐づけた案内の仕方。
これは多分、お客さんの聞き方が変わったからだと思う。「流行ってるもの」ではなく「自分に合うもの」を明確に求めて来る人が増えたとき、接客の問いも変わる。
取材でよく話を聞く20代前半の生活者が「香水を選ぶのって結局、今の自分を知ることだと思う」と言っていた。誰かに合わせるのではなく、自分のために嗅覚を使う感覚——そこに共鳴している人が確実に増えている。
ファッション誌にいた頃、「見た目」の自己表現が語られる場面は山ほどあった。でも嗅覚は視覚より遅れて言語化される。今、それが追いついてきている。その気配が、ちょっと面白い。
香りを選ぶことが、自分を語ることになっている。トレンドとしての「フレグランス熱」より、その底にある「嗅覚で自己表現する文化の成熟」の方が長続きする変化だと思う。あなたは今、どんな香りで今日の自分を決めているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。