「サブスクに飽きた」若者がレコードを買う理由――音楽との距離感が変わってきた

月額数百円で何千万曲が聴ける時代に、1枚3,000〜5,000円のレコードが売れている。国内のアナログ盤出荷枚数は2025年通年で200万枚を超え、前年同期比18%増というデータも出てきた。「なんでも聴けるからこそ、選べない」——その感覚が、若い世代の手をアナログへ向かわせているのかもしれない。
日本レコード協会の速報値によると、2025年のアナログ盤出荷は記録的な伸びを見せた。都内の中古レコード店では、25〜35歳の来店客が2023年比で約30%増えたという声も複数の店舗から聞こえてくる。
Xでは、こんな投稿が静かに広まっていた。
「レコードプレーヤーを買って3週間。Spotifyより1/100の曲数しか聴けないのに、毎晩めちゃくちゃ音楽聴いてる。"選ぶ"という行為が面白い」
この投稿には2,400件を超えるいいねがつき、「わかる」「うちも最近買った」というリプライが並んでいた。ちょっと面白いのは、返信している人の多くが20代だということだ。
サブスクが本格普及したのは2010年代後半。SpotifyやApple Musicの国内利用者は今や3,000万人規模ともいわれ、利便性という意味では完璧に近い環境が整った。
ただ、完璧すぎることが問題になってきた。「何を聴こうか」と思ったとき、候補が多すぎてアルゴリズムに任せてしまう。レコメンドが先回りして、「自分が選んだ音楽を聴いている」という実感が薄れていく——そういった声は2024年頃から散発的に出ていた。
コロナ禍以降、「手を動かして何かをする」ことへの欲求が高まったことも底流にある。料理、手帳、ガーデニング。アナログな行為が趣味として再評価される流れは、音楽にも波及してきた。
レコードを聴くには盤を取り出し、クリーニングして、プレーヤーに載せ、針を落とす。この手順が「今から音楽を聴く」という意識の切り替えスイッチになると話す愛好者が多い。スマホ1タップで始まるストリーミングとは、体験の質が根本的に違う。所作そのものが、時間の始まりを作る。
下北沢・高円寺エリアの複数の中古盤店で聞くと、客層の変化は数字に出ている。2023年まで主力だった40〜50代に加え、25〜35歳の購買が急増。平均購入単価は約4,200円で、月に1〜3枚のペースで買い続ける層が定着しつつある。
「サブスクをやめてレコードへ移行」ではなく、両方を使い分けるパターンが多数派のようだ。「新しいアーティストを知るのはSpotify、気に入ったらレコードを買う」という流れが自然に確立されている。音楽との向き合い方が、消費からコレクションへと分岐しつつある。
私自身、レコードを3,000枚ほど集めてきた。集め始めた頃、周りに「なんでわざわざ?」と聞かれることが多かった。でも今は、その問い自体が逆転してきた気がしている。
週末に下北沢を歩くと、若い人がレコードを抱えて店から出てくる光景が当たり前になった。5年前にはなかった風景だ。1枚500円のものから5,000円を超えるものまであって、それを選んだという事実が棚に並んでいく。自分の好みの地図、みたいなものができていく。
なぜ今この感性が立ち上がってきたか、と問うと、やっぱり「過多」への反動だと思う。情報も、コンテンツも、選択肢も、多すぎる時代。その中で「これを選ぶ」という行為そのものが、ぜいたく品になった。
ファッションに「ワンマイル服」という言葉があるように、音楽にも「ワンアルバム聴き」が静かに広まっている——そんな気配を、最近ずっと感じている。音楽が好きな人なら、これは多分刺さる。「持つ」ことへの意味の変容が、ここにある。
サブスク全盛の2026年にレコードが売れている。その背景にあるのは単なるノスタルジーではなく、「選ぶ」「触れる」「集める」という体験そのものへの渇望だ。便利さの先に残るもの——音楽がその答えを、少し先に見せてくれているのかもしれない。あなたが最後に「自分で選んだ」と感じた音楽を聴いたのは、いつだろう。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。