「今日のBGM」で一日を設計する——プレイリスト生活術が広がるワケ

BGMをAIが選んでくれる時代に、わざわざ自分でプレイリストをつくる人が増えている。X上では「今日のBGM」タグが日常的に流れ、その投稿数は2026年に入って前年同期比で約40%増。暮らしの演出を「外注」から「手元」に引き戻す動きが、静かに広がっている。
X上では毎日、「今日のBGM」「作業用プレイリスト」「朝のルーティン曲」といったタグがタイムラインを流れる。投稿の多くは、SpotifyやApple Musicのリンクとともに「今日はこういう気分」という一言が添えられている。
朝、5曲だけ選んでリピートしながら支度するの、なんか整う感じがする。AIおすすめは多すぎてかえって迷う
こういった声が、20〜30代を中心に共感を集めている。Spotifyが2025年に発表したレポートによると、日本国内ユーザーが自分で作成するプレイリストの平均曲数は前年比で約15%減少した。多くを詰め込むより「厳選」へシフトしている兆候だ。
背景には、ストリーミング時代の「情報過多疲れ」がある。Spotifyの日本国内月間アクティブユーザー数は2026年時点で約2,500万人に達し、プラットフォーム側のレコメンド機能も高度化した。しかし、AIが選んだ曲が「外れない」ぶん、「自分の気分と微妙にズレる」と感じるユーザーが増えている。
パンデミック後の「自分の時間設計」への関心の高まりも影響している。朝の時間の使い方、休憩の入れ方、就寝前のルーティン——一日の流れを意識的にデザインする人が増えた。そのなかで「BGMも自分で選びたい」という欲求が自然と生まれてきた。
SNSの普及も後押しする。自分のプレイリストをシェアする行為が「センスの表現」として機能し始め、ファッションコーデの投稿に近い役割を持ち始めている。音を選ぶことが、自分を語る手段になってきた。
自主制作プレイリストの平均曲数は約8〜12曲という調査結果もある。数百曲のライブラリより、今日の自分に合った10曲だけ。この「小さな編集」こそがポイントだ。選びすぎないことで、耳に馴染むまで深く聴ける。
「朝用」「集中作業用」「夜のリラックス用」と時間帯別に3本以上プレイリストを持つユーザーが増えている。BGMが一日のスイッチになっている。場所を変えずに気分を切り替える、省エネな生活設計術でもある。
手で選ぶ、自分で並べる——これはアナログレコードのカルチャーそのものだ。2025年の国内レコード出荷枚数は約180万枚(一般社団法人日本レコード協会)。デジタルとアナログを往来する感性が、プレイリスト文化に流れ込んでいる。
職場や友人間で「今日これ聴いてる」とシェアする文化が生まれており、フレグランスや服と同じように、音楽が「今日の自分」の表現になっている。気分の可視化ツール。
「新曲発見はAIに任せ、実際に使うプレイリストは自分でつくる」という使い分けも浸透しつつある。AIを素材集めのツールとして使い、キュレーションは自分でやる。そのバランスが、ちょっと面白い。
レコードを3,000枚近く持っている私からすると、この流れはとても腑に落ちる。
レコードって、A面が終わったら裏返す必要がある。その「手間」が、実は集中の切れ目になる。プレイリストも同じで、曲を選ぶ行為自体が「今の自分と対話する時間」になっているんだと思う。
取材でよく感じることがあって、「何を聴いているか」は「どんな気分で過ごしたいか」とほぼイコールだ。音楽は環境そのものをつくる。自分でBGMを選ぶ人は、自分の環境を自分でデザインしたい人でもある。
ストリーミングが「すべての音楽へのアクセス権」を与えてくれたとしたら、次のステップは「その中からどう選ぶか」。多すぎる選択肢の時代に「あえて絞る技術」が価値を持ち始めているのが、ちょっと面白い。
自分の暮らしに「選ばれた音」をあてることが、日常のクオリティを上げるいちばん安いリノベーションかもしれない。BGM好きな人なら、これは多分刺さる。
「今日のBGM」を選ぶことは、その日をどんな空気で過ごしたいかを決めることだ。服を選ぶように、香りを選ぶように、音を選ぶ習慣が静かに定着しつつある。あなたは今日、自分のプレイリストを持っているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。