外国人労働者220万人時代——育成就労制度が問い直す「共生」の構造

まず事実から確認しておく。2026年6月時点の在留外国人数は推計220万人超(出入国在留管理庁)。2024年6月に施行された育成就労制度は、30年続いた技能実習制度を廃止し「労働力確保」と「人材育成」の両立を掲げた。だが制度発足から2年、現場では想定外の課題が次々と表面化している。
出入国在留管理庁の2026年3月末統計によれば、育成就労の在留者はすでに約18万人。旧・技能実習制度と比較して転籍要件が緩和されたことで、受け入れ企業からは「育てた人材が移ってしまう」という声が上がる一方、支援団体からは「依然として転籍ハードルが高い」という指摘が絶えない。
Xでも議論は活発だ。
「育成就労でも転籍の壁は変わってない。同一職種なら1年後に転籍可能なはずが、企業の引き留め慣行でほぼ機能してない。制度だけ変えても現場が変わらない典型例」(国際労働支援に関わるNPO職員のアカウントより)
政府は2026年度予算で「外国人との共生施策」に前年比15%増となる約320億円を計上。日本語教育や生活支援の充実を図っているが、複数の自治体担当者は「予算はあっても専門人材が足りない」と口をそろえる。
技能実習制度は1993年の創設から30年超、「国際貢献」という建前と「人手不足解消」という実態の乖離が指摘され続けてきた。2023年に政府の有識者会議が廃止勧告を出し、翌年の育成就労法成立に至った経緯がある。
構造的な問題は三層に分かれる。第一に、受け入れ企業の意識変容の遅れ。第二に、行政の縦割り——出入国管理は法務省、労働条件は厚労省、日本語教育は文科省と分散した管轄が一元的対応を阻む。第三に、地域差だ。農業・漁業が集中する地方と製造業が多い都市部では課題の性質が全く異なるにもかかわらず、政策設計は一律に近い。
これは「移民政策の是非」というより、「受け入れた人が働き続けられる社会環境を作れるか」という統合政策の問題に近い。
育成就労法は「同一職種内での転籍を1年経過後に認める」と規定する。だが支援団体の調査では、2026年前半に転籍を試みたケースのうち、約4割が送り出し機関との契約を理由に実質制限されたとされる。制度の根幹が機能不全に陥りかねない状況だ。
文化庁の2025年度調査によれば、都市部自治体の日本語教室設置率は72%だが、人口5万人未満の市町村では39%にとどまる。外国人住民が多い農村地域ほど、支援インフラが薄いという逆転現象が起きている。
ベトナム・インドネシア・フィリピンなど主要な送り出し国は近年、自国労働者の権利保護を強く求めるようになった。2026年3月にはベトナムが日本向け送り出し費用の上限規制を改定。労働者側の来日前借金が構造的に増加するケースも報告されている。
育成就労で3年間就労し要件を満たせば特定技能1号に移行できる。このキャリアパスが制度の成否を左右するが、現時点で政府は移行率データを未公表のまま。制度検証が遅れている。
地方支局時代、過疎地域の合併問題を2年かけて追った経験がある。議事録を全件読み込んで気づいたのは、「制度の設計者」と「制度の使い手」が見ている現実のずれだった。育成就労制度も同じ構図に映る。
現場の受け入れ企業の中小経営者は「制度が変わるたびに書類が増え、何が正しいかわからない」と言う。支援団体のスタッフは「来日前に結んだ契約が日本の法律と食い違っていても、労働者側には訂正する手立てがない」と訴える。
行政の縦割りという点では、大規模災害の現場取材と酷似している。いざというとき「うちの所管ではない」が連発される構造だ。出入国・労働・教育・住宅と縦割りが深く、当事者が相談窓口にたどり着けないまま問題が深刻化するケースは珍しくない。
立場Aの受け入れ企業側は「安定的に人材を確保できる仕組みを」と求め、立場Bの人権・労働支援団体は「移動の自由と権利保護の徹底を」と主張する。どちらも正当な訴えだが、この二つを両立できる制度設計は、まだ日本社会の合意を得ていない。
今後の焦点は2027年に予定される制度の中間見直しだ。転籍率・特定技能移行率・日本語習得率の実績データが揃い始める時期と重なる。数字が語る現実から目を背けない議論が、そこで問われる。
育成就労制度は「始まり」に過ぎない。220万人超の外国人が既に日本社会の生産を支え、地域に根を張って生活している。「人手不足対策」という言葉の後ろに、もっと大きな問いが隠れている——この社会は、どこまで本気で「共生」を設計するつもりなのか。2027年の中間見直しまでの1年が、その答えを問う期間になる。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。