ヤングケアラー支援に広がる自治体間格差——制度整備5年で見えた構造的課題

まず事実から確認しておく。厚生労働省が2021年に実施した初の全国実態調査では、中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーに該当するとされた。以来、国は「支援強化」を繰り返し打ち出してきたが、2026年9月現在、専従の相談窓口を設けた市区町村は全体の約3割にとどまる。残る7割の自治体では、家族の介護を一手に担う子どもたちが依然として「見えない存在」のままだ。
ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家族の介護・看護・家事・感情サポートを日常的に行う子どもや若者を指す。文部科学省と厚生労働省は2022年以降、学校との連携強化や相談窓口の整備を都道府県・市区町村に求めてきた。しかし2026年9月の厚労省進捗調査(速報値)によれば、専任の支援コーディネーターを配置済みの自治体は47都道府県で平均4.3人にとどまり、10人超の自治体とゼロの自治体が混在している。
X(旧Twitter)上では今週、支援の現場に携わる当事者とみられるアカウントの投稿が広がった。
「中3まで週3で祖父の透析病院に付き添ってました。担任に相談したら『頑張ってるね』で終わった。あの一言が今でも刺さってる」
この投稿は2万件以上のいいねを集め、同様の体験談が連鎖した。「認識はある、でも制度がない」という構造は都市部と地方に共通している。次に、なぜこの状況が続くのかを掘り下げる。
ヤングケアラー問題が政策課題として浮上したのは、英国の先行事例が参照された2010年代後半のことだ。英国では1995年の「ケアラー法」以降、段階的に支援体制を構築し、現在は自治体レベルでのアセスメント義務が法定化されている。
日本でも2021年の実態調査後、政府は「ヤングケアラー支援体制強化事業」に予算を投じてきた。2022〜2025年度の累計予算は約180億円。しかしこの予算の多くが「普及啓発」に充てられ、直接の相談・支援につながる人件費や専門職配置には届きにくい構造があると、支援団体は指摘する。
さらに根本的な問題がある。これは「子育て政策の未整備」というより、行政の縦割り設計そのものの問題に近い。学校は教育委員会管轄、介護は福祉部門、医療は別系統。2024年に子ども家庭庁が「横断的な一元管理」を掲げたが、現場レベルでの連携は依然として属人的な努力に依存している。
2026年の厚労省調査によると、ヤングケアラーへの相談窓口設置率は東京都特別区で約85%に達する一方、人口10万人未満の市では約22%にとどまる。人口規模と財政力が支援の密度を直接左右している構図が鮮明だ。
担任教師がヤングケアラーを把握しているケースは、2025年文科省調査で全体の約31%。「気づいていても声をかけにくい」という教師側の戸惑いも浮かぶ。家庭の事情への介入を躊躇する文化が、早期発見を妨げている。
支援対象は原則18歳未満だが、成人後も介護を継続するケースは多い。就職活動や大学進学への影響は長期にわたる。「若者ケアラー」への支援拡張を求める声が2025年ごろから政策議論に入りつつある点は、見逃せない動きだ。
神奈川県横浜市は2023年度から専任コーディネーター8名体制を整備し、2025年度の相談件数は712件に達した。一方、同じ関東圏でも財政規模の小さい市では年間相談件数が一桁の事例もある。「やる気」の問題ではなく、「構造」の問題であることがこの数字から読み取れる。
地方支局時代、人口減少に悩む自治体を取材していたとき、似たような場面を何度も見てきた。国が旗を振っても、財政力と人員が伴わなければ地方の現場には届かない。縦割り行政が「落とし穴」を作り、その穴に子どもたちが落ちている——ヤングケアラー問題の構造は、私が取材してきた地域衰退の問題と本質的に重なる。
立場Aとして:子どもの権利・福祉を重視する立場からは、国が財政移転を含む強制力ある法整備に踏み込むべきという主張がある。英国モデルを参照しつつ、アセスメントを自治体に義務付ける法改正が一案として挙がっている。
立場Bとして:自治体の自主性・財政自立を重視する立場からは、国の一律強制より先進自治体の好事例を横展開し段階的に底上げを図るべきという見方もある。「義務化」より「インセンティブ設計」のほうが持続性があるという議論だ。
私自身の見立てを短く添えるなら——現状の「努力義務+補助金」の枠組みは限界に近い。少なくとも「発見・報告」の義務化と専門職配置への恒久財源確保の二点は、次期臨時国会で議題にのぼる可能性がある。その動向を注視したい。
ヤングケアラー問題は、子育て・介護・教育・貧困が交差する複合課題だ。「かわいそう」という感情で終わらせず、制度の網の目をどう設計するかが問われている。あなたの身近に、今日も声を上げられない子どもがいないだろうか——その問いが、政策議論の原点になる。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。