技能実習から育成就労へ——移行2年目で浮かぶ制度の死角と現場の実態

まず事実から確認しておく。2024年6月に成立した育成就労法は、30年続いた技能実習制度を廃止し、外国人労働者の「人材育成」と「就労」を正面から認めた政策転換だった。移行から約2年が経った2026年夏、現場では制度への期待と空白が同居している。
2026年9月現在、在留外国人数は約365万人(法務省推計)。育成就労への移行対象者は約15万人に上るとみられる。制度改正の目玉だった「転籍の自由化」について、今週公表された民間調査機関の報告が波紋を呼んでいる。移行者のうち実際に転籍を果たした割合は約8%——当初の想定を大きく下回る数字だ。Xでは「#育成就労」がトレンド入りし、こんな声が相次いだ。
「転籍要件が緩和されたとはいえ、1年縛りが実質的な足かせだ。うちの現場は慢性的に人が足りないのに、制度の理念と現実がずれすぎている」(農業関係者、匿名)
転籍率の低さは、言語の壁、手続きの煩雑さ、「辞めると帰国費用が自己負担になる」という慣行が複合的に絡んでいるとみられる。
技能実習制度は1993年に創設。建前は「国際貢献・技術移転」だったが、実態は低賃金労働力の補填として機能してきた。政府の有識者会議が2022年の最終報告で「制度の目的と実態が乖離している」と明記したことが、廃止議論を加速させた。
新制度では従来「原則不可」だった転籍を「同一業種・1年以上勤務」を条件に認め、在留資格「特定技能」への移行も段階的に設計された。2026年度予算では日本語教育支援に前年比15%増の約280億円が計上されている。
ただし「制度の骨格は整ったが、運用する現場が追いつけていない」という指摘は各方面から出ている。受け入れ機関への監査体制の強化、送り出し国との二国間協定の整備——いずれも道半ばというのが実態だ。
転籍の自由化は新制度の柱だった。しかし移行者全体に占める転籍実施率は約8%にとどまる。手続き面の整備が不十分なまま制度だけが動き出した形で、制度設計と現場運用のタイムラグが如実に表れている。
農業・水産・建設・介護など14業種で慢性的な人手不足が続く。2025年度の受け入れ計画数は約12万人だったが、実際の入国者数は計画比88%にとどまった。需要と供給のミスマッチは依然解消されていない。
政府は約280億円を計上したが、支援機関の分布は都市部に偏る。地方の受け入れ企業では「週1回のオンライン授業しか用意できない」という声もある。制度の恩恵が届くかどうかは、企業の規模と立地に左右される構造だ。
立場A(拡大派)は「少子化で縮む労働力を補完するには、対象業種・受け入れ数の拡大が不可欠」と主張する。立場B(慎重派)は「監査体制が未整備のまま数を増やせば、旧技能実習の問題を繰り返す」と警戒する。国会での対立軸は鮮明で、次の制度見直しは2027年をめどに予定されている。
これは「移民政策の是非」というより、「労働市場のインフラ整備の問題に近い」というのが私の見立てだ。
地方支局時代、自治体合併問題を2年かけて追いながら感じたのは「制度の設計と運用の現場には常にタイムラグがある」ということだった。育成就労も同じ構造をたどっている。法律が施行されても、受け入れ企業・監理団体・支援NPOのキャパシティが追いつかなければ制度は紙の上の話に終わる。
2026年9月現在、政府が「成功モデル」として公表している事例は、中部地方の一製造業が中心だ。その企業の条件として挙げられているのは「専任の日本語教育担当者の配置」と「社内の多言語対応」——どちらも中小企業には高いハードルだ。
来年予定される制度見直し審議で注目するのは、転籍要件の緩和幅、対象業種の拡大可否、日本語能力評価基準の3点だ。国会会議録を長年読み続けてきた経験からいえば、ここで「受け入れ数の目標値」の議論に終始すると、また制度と現実のギャップが広がる。「質の整備」を軸に議論が展開されるかどうかが、制度の実効性を左右する分岐点になる。
育成就労制度は、技能実習の失敗を踏まえた構造的な修正の試みだ。転籍率8%という数字は、理念が運用に追いついていないことを示す指標として重く受け止めるべきだろう。2027年の見直し審議に向けて、現場の実態がどれだけ政策決定に反映されるか——その回路が機能するかどうかが、問われている。
あなたの職場や地域に、育成就労制度の下で働く外国人労働者はいるだろうか。制度の問題は「遠い話」ではなくなっている。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。