「直して着る」がSNSで広がる——アパレル値上がりが加速するリペアカルチャー


洋服の穴を繕う動画、色あせたデニムを染め直した写真、ほつれたニットを「かけはぎ」に出したという報告——今年の夏、そういう投稿がXのタイムラインに増えた気がする。気のせいではないかもしれない。アパレル各社が値上げを続けるなか、「買う」より「直す」を選ぶ人が静かに増えている。
国内の主要アパレルブランドは、原材料費・人件費の高騰を受け、2024年から2026年にかけて平均18%の価格改定を実施した(繊維産業連合会調べ)。1万円を切っていたデニムが1万2,000円になり、3,000円台のTシャツが4,500円前後になる。そのタイミングで目立ってきたのが、SNS上の「リペア記録」投稿だ。
「お気に入りのデニム、膝に穴が開いたのでジーンズショップに持ち込んだら2,500円で直った。新品より愛着わく気がする」
このような投稿が今年7月以降にXで急増しており、「リペアファッション」関連タグの月間投稿数は前年同期比でおよそ3.2倍に達したとされる(SNS分析サービス・Trendrより)。
リペア文化自体は新しくない。高度経済成長期以前の日本には「ものを直して使う」が当然の感覚としてあり、かけはぎや草履の修理といった職人仕事が生活に組み込まれていた。それが「使い捨て」の時代に押しやられ、今また戻ってきている——という見方もできる。
ただ、今回の盛り上がりには2つの力が重なっている。ひとつは経済的合理性。もうひとつは、脱大量消費への感性的な共鳴だ。2025年に環境省が実施した「若者の消費行動調査」では、20〜34歳の47%が「同じ服を長く着ることに価値を感じる」と回答している。節約と価値観が、同じ方向を向いている。
都市部を中心に、修理専門店やリペアカフェの数が増えている。東京都内の衣類修理受付点数は2023年比で約40%増(東京都生活文化局の業態調査より)。ファストファッションの店舗跡に修理工房が入るケースも出てきた。街の生態系が、少しずつ変わっている。
リペアの魅力のひとつは、ビフォーアフターの可視化のしやすさにある。ほつれたニットが整い、色落ちしたジャケットが鮮やかになる——その過程がリール動画やカルーセル投稿に向いている。修理という地味な行為が「映えコンテンツ」になる、ちょっと面白い逆転が起きている。
単なる節約ではなく、「年季の入った服を大切にしている」というアイデンティティの提示でもある。使い込まれた革靴やデニムを育てる感覚と地続きで、古着好きな人なら、これは多分刺さる。所有物に手間をかける行為が、自己表現になっている。
古着屋巡りが好きなわたしにとって、この動きは「来たか」という感じがある。古着を選ぶ理由として「環境のため」と答える人は実は少なくて、多くは「一点物が好きだから」「この質感が好きだから」という感性的な理由だ。リペア文化の広がりも、それに近いのではないかと思っている。
一度壊れかけた服を直した経験がある人はわかると思うが、あの感覚は「また買えばいい」では替えられない。手間をかけた分、愛着が増す。それがSNSでの共有欲にも直結している。
気になるのは、この流れが一時的な節約志向で終わるか、本当に生活の感覚として根付くかだ。経済的余裕が戻れば「また買えばいい」に戻る人も当然いるだろう。ただ、修理インフラが整い、「直す工程」自体が楽しいと知った世代が増えれば、文化の底上げになる可能性はある。数字よりも、まずその「気配」を感じている。
アパレル値上がりをきっかけに、「直して着る」という感覚が静かに広がっている。経済的合理性と感性的な共鳴が重なったとき、文化は根付きやすい——そんな条件がいま揃いつつある。あなたのクローゼットに、まだ直せば着られる服、眠っていないだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(白石美月)が執筆しています。