能登復興2年9カ月——住民流出が止まらない「行政の限界」とは何か

能登半島地震(2024年1月)から2年9カ月が経過した2026年10月、石川県内の被災地では仮設住宅に暮らす住民がいまだ3,214人を超えている(10月1日現在・石川県公表)。自治体の復興計画は「予定通り」と表面上は進むが、実態としての人口流出は続いており、珠洲市では震前比28.4%の人口減少が確認されている。これは個別の自治体の失敗というより、日本の地方行政が抱える構造問題に近い。
石川県が公表した最新データによると、仮設住宅入居者数はピーク時(2024年4月:約1万5,000人)から大幅に減ったものの、完全解消の見通しは2027年3月にずれ込んでいる。
能登地方6市町のうち、珠洲市と輪島市では住民登録人口が各々28.4%・19.7%減少した(住民基本台帳・2026年9月比較)。国土交通省の調査(2026年8月)では、転出者の約67%が金沢市など県内他地域または県外に移っており、「帰還意向なし」と答えた転出者は全体の41%にのぼる。
「仮設を出たくても、帰る家もインフラも戻っていない。自分たちは見捨てられたのかとも思う」(輪島市内、60代男性・避難継続中)
復興事業が遅れた構造的要因の一つは、国・県・市町間の役割分担の不明確さだ。住宅再建支援は「被災者生活再建支援法」に基づき最大300万円が支給されるが、これは個人住宅への直接支援であり、インフラ・公共施設の復旧は別スキームで動く。結果として、道路は復旧しても建て替え資金が届かない世帯と、資金はあってもライフラインが整わない地区が混在した。
2026年度政府予算では能登復興に約4,200億円が計上されたが、うち地方負担分を財政措置できた市町は4自治体にとどまる。残る2市町は財政調整基金を事実上使い切っており、地方債依存度が高まっている。
もう一つの構造問題は、被災地の人口規模に対して復興コストが不釣り合いな点だ。珠洲市の震前人口は約1万1,000人(2023年国勢調査)。復興総費用は国・地方合わせて推計2,800億円超とされており、単純換算で住民1人当たり約2,500万円に達する。過疎地における大規模災害の復興モデルは、現行の制度設計の想定外だったと言わざるを得ない。
転出者の年齢構成では、20〜39歳が全転出者の約47%を占める(石川県2026年9月推計)。地域社会の維持に必要な人口規模を割り込めば、学校・医療・商業の存続は構造的に困難になる。「復旧後の地域に戻る」の前に、地域そのものが機能しなくなるリスクが現実味を帯びている。
能登の基幹産業である漁業では、震災で損傷した漁港施設の修復率が2026年9月時点で約62%にとどまる(水産庁公表値)。事業再開のめどが立たない漁業者の一部はすでに廃業を選択しており、「帰還しても仕事がない」という転出の根本原因になっている。
政府・与党の一部からは人口縮小を前提にしたコンパクトなまちづくりを推進する意見も出ている(2026年6月・自民党復興特別委員会提言)。
立場A(コンパクト化推進派): 人口減少地域への大規模インフラ投資は持続不可能。選択と集中による効率的な復旧が長期的に住民のためになる。
立場B(帰還支援派): 住民は故郷への愛着と生活の継続性を求めている。「コンパクト化」は実質的な強制移住であり、個人の選択を尊重すべきだ。
まず事実から確認しておく。今回の復興の遅れを「担当者の失敗」と見るのは正確ではない。人口5万人以下の過疎地に壊滅的被害が生じたとき、現行の日本の行政・財政構造がどう機能するか——能登はその実証事例になっている。
これは能登固有の問題というより、南海トラフ地震など今後起きうる大規模災害への「予行演習」の問題に近い。地方支局時代に市町村合併の議事録を2年かけて読み込んだ経験から言えば、行政の意思決定は往々にして「今ある制度の延長」でしか動かない。縦割りの弊害も財源の綱引きも、2000年代の合併論争で見た構造と重なる。
「創造的復興」という言葉は合理的に聞こえる。だが誰の視点で合理性を定義するかが問題だ。転出した若者に「地域の持続可能性」を語っても、残った高齢者に「新しいまちの形」を押しつけても、それは復興とは呼べない別の何かになる。
短期的には2027年度末を目標とする仮設住宅解消が焦点になる。だが中長期的には、過疎地における「復旧の定義」と「費用負担の設計」を法制度レベルで問い直す必要がある。個別の対処療法では限界が来ている。
能登半島地震から2年9カ月。数字の上では復興は進んでいるが、帰還意向のない転出者が4割を超えるという事実は重い。「元に戻す」のか「新しい形で再生する」のかという問いに、行政も住民もまだ答えを出せていない。次の大規模災害が来る前に、日本社会は「過疎地の復興モデル」を本当に持っているのか——問い直す時期に来ている。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。