外国人労働者225万人時代——「育成就労」移行2年目の現実と構造課題

まず事実から確認しておく。2026年6月時点での外国人労働者数は約225万人(厚生労働省推計)。2024年6月に施行された「育成就労法」は、約30年にわたって批判を受け続けた技能実習制度を廃止し、新たな在留資格「育成就労」を設けた。制度移行から丸2年——しかし現場では「変わった部分」と「変わっていない部分」が混在したままだ。
X(旧Twitter)上では、育成就労制度をめぐる議論が8月下旬に再び活性化している。きっかけは法務省が今月公表した「育成就労生の転籍申請状況」の中間集計だ。就労開始から1年後に転籍(職場変更)が認められる要件が設けられているが、申請件数は当初想定を大幅に下回り、実際の転籍成立件数はさらに少ない。
「育成就労に変わって何が変わったの?現場では管理組合もそのままだし、実態は技能実習と大差ない」(建設業界関係者、SNS投稿より)
受け入れ企業の側からは制度の煩雑さを訴える声も上がる。転籍要件の確認書類、監理団体の役割変更、在留資格更新の手続き——これらが旧制度と微妙に異なり、中小企業では対応が追いつかないケースが複数報告されている。
技能実習制度は1993年の創設以来、「国際貢献」という建前のもとで事実上の安価な労働力確保策として機能してきた。2022年には法務省の有識者会議が「制度の抜本的見直し」を勧告。2024年の育成就労法施行で、建前と実態の乖離を是正しようとする動きがようやく制度化された。
ただし移行期間は3年(2024〜2027年)。既存の技能実習生は旧制度のまま継続するか新制度に移行するかを選択できる構造になっており、現時点では「2つの制度が並行して存在する」状態が続く。2026年8月時点で育成就労への移行者数は全体の約3割にとどまるとの試算も出ており、制度転換の速度は想定より遅い。
育成就労制度の目玉が転籍の自由化だ。旧・技能実習では原則として転籍が認められず、これが劣悪な労働環境からの離脱を困難にする一因とされてきた。新制度では1年後の転籍を認めるが、「日本語能力試験N4相当以上」「技能評価試験の合格」などの要件が実質的な障壁になっているとの指摘が有識者から相次いでいる。
旧制度下の監理組合が「登録支援機関」として新制度に移行するケースが多く、実質的に同じ組織・同じ人員が運営を続けている現場も少なくない。制度は変わっても運用者が同じであれば、問題の構造は変わらない——この疑問は、有識者の間でも繰り返し提起されている。
ベトナム・インドネシア・フィリピンとの二国間協定は新制度に合わせて再交渉済みだが、ミャンマーとの協定は2026年8月時点で依然として締結に至っておらず、同国からの新規受け入れは事実上停止状態にある。
これは「外国人労働者の問題」というより、「日本の労働市場をどう設計するかの問題」に近い——そう言い直したほうが正確だろう。過去12年の取材で私が繰り返し目にしてきたのは、制度の建前と現場の実態の乖離だ。人口減少地域の合併議論でも、災害復興でも同じパターンを見た。中央で設計された仕組みが、地域や現場に届く段階で変形する。
育成就労制度がそのパターンを繰り返すかどうかは、転籍の実績数が一つの判断指標になる。制度上「できる」ことが、実態として「できている」かどうか——その差分を追い続けることが、この問題を見るうえでの基本軸だ。
立場Aとして「受け入れ企業の負担軽減が先決」という意見がある。煩雑な書類対応が中小企業の受け入れ意欲を削いでいるという実態は無視できない。立場Bとして「労働者の権利保護を優先すべき」という視点もある。転籍要件の緩和や監理機関の第三者監査の強化を求める声だ。著者の見立てを短く言えば、この2つは中長期的に同じ方向を向いているはずで、問題はその「中長期」を誰が担保するか、という一点に集約される。
移行期間の終了は2027年。残り1年強で現場の実態データをどれだけ蓄積し、制度評価に活かせるか。情報公開の質が、今後の焦点になる。
制度は変わった。だが仕組みを動かすのは、最終的には人だ。育成就労制度が「技能実習の看板替え」で終わるかどうかは、転籍の実績数、監理団体の刷新度、そして外国人労働者自身の声が制度設計にフィードバックされるかにかかっている。あなたの地域で働く外国人材は今、どんな職場にいるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。