「ヤングケアラー」支援3年の現実——新調査が示す「見えない負担」の構造

まず事実から確認しておく。政府がヤングケアラーへの支援体制を本格的に整備し始めてから、今年で4年が経つ。2026年7月に厚生労働省・文部科学省が公表した最新実態調査では、相談件数は増加した一方で、支援が届いていない層の存在が改めて浮き彫りになった。数字の改善を成果として語れる段階かどうか、立ち止まって考える必要がある。
厚生労働省と文部科学省が2026年7月に公表した「ヤングケアラー実態調査(2025年度版)」によると、全国の中学2年生のうち約5.9%が家族の介護や世話を日常的に担っているとされる。2021年度調査の5.7%からほぼ横ばいだが、高校生・大学生を含めると実数は数十万人規模に上るとみられる。
X(旧 Twitter)上でも、この調査結果を受けた投稿が相次いでいる。
「中学生のとき、母の介護で毎日帰宅後3時間つぶれてた。先生に相談しても『家庭の事情だから』で終わった。支援って何を指してるんですか」(匿名・20代)
この一文が示すのは、制度の整備と現場への浸透の間にある、埋まらない溝だ。
ヤングケアラーが社会的に注目されるようになったのは2020年前後のことだ。政府は2022年4月に「ヤングケアラー支援体制強化事業」を開始し、都道府県・市町村への補助金を措置した。2023年度時点で支援事業に参加する自治体は全国で約600市区町村にのぼり、スクールソーシャルワーカーの配置拡充も進められてきた。
しかし、この「拡充」には構造的な限界がある。支援の入り口となる相談件数は2022年度比で約1.8倍に増えた一方、フォローアップ体制は自治体ごとに大きく異なる。地方では、そもそも相談窓口の存在を知らない当事者も多い。
これは教育制度の問題というより、介護・医療・教育が縦割りで管轄される行政構造の問題に近い。担当省庁が分散している限り、当事者は「どこに行けばいいか分からない」まま支援の隙間に落ちる構図が続く。
専用相談窓口への問い合わせ件数は2025年度に年間2万3,000件を超えた。数字だけ見れば前向きな変化だが、当事者団体からは「声を上げられた人だけが数字に見えている」との指摘がある。実態を把握できていない層の規模は、調査設計上、依然として不明なままだ。
中学生を対象にした調査は充実してきたが、高校生以上の実態把握は遅れている。18歳以上になると学校を経由した支援が届きにくくなり、就労・進学の選択にまで影響が及ぶケースが増えている。2025年度調査では高校生の4.1%が週20時間以上のケアを担っているというデータも示された。
政令市・中核市と農村部では、支援体制の厚みに顕著な差がある。人口5万人未満の市町村では、専任の支援員を置けないケースが全体の約67%に達するとされる。財源と人材の両面で、地方自治体の負荷は過大だ。補助金の措置だけでは埋まらない格差がそこにある。
遊軍記者として大規模災害の取材に入ったとき、支援が届かない理由は常に「縦割り」にあると学んだ。住民に必要な情報が、国・都道府県・市町村の3層をまたいで届かない。ヤングケアラーの構造も同じだ。
立場Aからすれば、相談件数の増加は支援認知の広がりを示す成果だ。予算も拡充されており、制度設計は着実に前進している。立場Bからすれば、認知度が上がっても支援員の人数が追いつかなければ絵に描いた餅に終わる。地方の人材不足は補助金だけで解消できる問題ではなく、より踏み込んだ人員配置の仕組みが必要だという。
著者の見立てを一言で添えるなら——今は「制度をつくる」フェーズから「制度を届ける」フェーズへの移行期にある。5.9%という数字が動かない現実を直視するなら、次の一手は相談件数ではなく「支援後の変化」を測る指標の整備ではないだろうか。
約5.9%という数字は、40人学級に換算すると2人以上が存在する計算になる。「見えにくい」と言われてきた問題は、すでに「見えている」はずの規模だ。制度が届いていないのではなく、届け方の設計が追いついていない——そう問い直す段階に、社会は来ている。あなたの身近な教室や職場にも、当事者はいるはずだ。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。